(※写真はイメージです/PIXTA)

子のない叔父が亡くなり、相続人の立場となった甥姪。残された叔母に配慮する遺産配分で円満な着地を目指せるはずが、突然家庭裁判所から分割協議の調停申立書が届き…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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子のない叔父夫婦とは「円満な関係」だったが…

今回の相談者は、50代の会社員の藤田さんです。父方の叔父が亡くなり、配偶者である叔母とトラブルになり困っているということで、筆者のもとを訪れました。

 

「亡くなった叔父は子どもがなく、遺言書も残していませんでした。それで、叔母だけでなく、私と弟も相続人の立場になったのですが…」

 

藤田さんの父方は地主の家系です。藤田さんの亡き父親は3人きょうだいの長男で、その下に長女の叔母、そして亡くなった叔父という構成です。父親の妹にあたる叔母は遠方の資産家に嫁いでいることから、以前より相続放棄を明言しています。

 

子どものない叔父夫婦は、ことあるごとに藤田さんきょうだいを頼っており、実際に日常生活のこまごまとした手助けを行ってきたといいます。

 

「叔父は生前、自分が亡くなったあとについて、私と弟の前で改まって話をしたことがあるのです。第一は、叔父が亡くなったあとも妻である叔母を気にかけてほしいということ。そして、叔母が亡くなったら、不動産はすべて藤田家の血縁に戻したいということでした」

 

そこにはいつも叔母も同席しており、深くうなずきながら同意していたそうです。

 

「このやりとりは、叔父と叔母と会うたびに何度も繰り返されていたんです。だから、親族はみんな知っていますし、私と弟も、ふたりの本心だと理解していました…」

突然の体調悪化で、あっというまに旅立った叔父

半年前、叔父が急死しました。もともと持病があったそうですが、あっという間に状態が悪化してしまったといいます。

 

葬儀は藤田さんきょうだいの協力もあり、無事に終わりました。そして四十九日の法要のあと、相続について話し合いが行われました。

 

叔父が遺した不動産だけでも、軽く3億円を超えます。藤田さんと弟は、現預金のすべてと自宅、駐車場やアパートといった収益不動産を叔母のものとすることを快諾しました。管理に手間がかかる伊豆の別荘だけは、釣りが趣味だという藤田さんの弟が相続し、叔母が亡くなったあとについては遺言を残してもらい、自宅と駐車場は藤田さん、残りの収益物件は弟、現金はきょうだいで2分割して遺贈することで話がまとまりました。

 

叔母は泣いて藤田さんと弟に感謝しました。

 

「私はその後、ひとりになった叔母が寂しくないよう、たびたび訪問しては、食べ物などを差し入れていました」

 

叔母は相続手続きについて、実の弟の知り合いの司法書士に依頼しているといっていましたが、藤田さんと弟は、叔母に遠慮する気持ちから関与を最低限にとどめ、すべてを任せていました。

泣き崩れていたあの叔母が、調停の申し立て…!?

ところがです。ある日突然、藤田さんきょうだいのもとへ家庭裁判所から分割協議の調停申立書が届きました。

 

藤田さんが驚いて開封すると、そこには叔母と弁護士の名前があり、「叔父の遺産分割協議がまとまらないため、調停を開始する」とありました。これまで円満に話をしてきた叔母の行動とは、にわかには信じられませんでした。

 

藤田さんは筆者の事務所で涙をにじませました。

 

「70代の叔母は、おっとりとした優しい人だったんです。あの叔母が調停に踏み切るなんて、私にはまったく理解できません…」

 

藤田さんの弟は、一連の行動は叔母の意思ではなく、叔母の実弟と専門家が主導しているのではと疑っています。

 

「書類を見て驚いて、弟と一緒に叔母の自宅を訪問したのですが、インターフォンで名前を名乗ったら通話が切れ、二度と出てもらえなくなりました…」

 

藤田さんは、あまりの対応の差に大変なショックを受けました。

「調停は心情をくみ取るところではありません」

調停が始まり、家庭裁判所で叔母や弁護士と顔を合わせましたが、心の通う会話はできませんでした。藤田さんは、思わず、

 

「これでは叔母に気持ちが伝わらないばかりか、叔母の気持ちもくみ取れませんね」

 

と調停員に言ったところ、調停員は藤田さんに顔を向けることもなく、

 

「調停は気持ちを汲む場所ではないですからねぇ」

 

と苦笑し、藤田さんは言葉を失いました。

 

「調停員の方が大変な業務をしているのは理解できます。ですが、相続人の気持ちにもう少し配慮があったなら…」

 

筆者と提携先の弁護士はここまでの話を聞き、こうなってしまった以上、法定相続分の分割を受けるしかないとアドバイスを行い、都度相談を受けながら、今後の経過をサポートすることになりました。

 

調停によって親族間の関係が壊れてしまったという相談は、あとを絶ちません。なかには、自らのビジネスのため、あるいは嫉妬等の感情のため、動揺している相続人にあれこれ耳打ちする人もいます。

 

「まとまらないから調停だ!」と安易に行動へと移すのではなく、親族同士、多少ぶつかることがあったとしても、双方が歩み寄って解決策を模索しない限り、相続の「本当の終わり」は迎えられないのです。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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