【関連記事】患者が医師を変える「ドクターショッピング」は何が問題なのか
医師の診断と治療への不信が原因
受診先を変えるドクターショッピング行動は、様々な問題を引き起こす。患者の定着による経営の安定を図るためには、ドクターショッピング行動に関する患者インサイトを探る必要がある。
■ドクターショッピング行動の正体を探る
(1)ドクターショッピング行動とは何か?
本稿では、ドクターショッピング行動の定義を、同一疾患の治療において医師の紹介なしに患者の自己都合により医師を複数交代し、転院による継続受診の中断や重複受診をする行為であると定める。しかし、ドクターショッピング行動の定義は様々である。
例えば、Lo et al.(1994)は、同じ病気のエピソードで専門医による紹介なしに医師を交代することと定義づけている。
kasteler et al.(1976)、Sato etal.(1995)は、紹介なしで同じ病気のエピソードにおける同じ苦情に対して事前に2カ所以上の医療施設を訪れている患者と定義し、Andylim etal.(2018)は3カ所以上の医療提供者に相談していることと示している。
また、Ohira et al.(2012)は、大学病院を受診する前に、2人以上の医師に同じ主訴を訴え、その後、紹介なしで受診する患者と定義づけている。Worleyand Hall(2012)は、ドクターショッピングについて、複数の医療提供者から薬を受け取っている患者を説明するために使用される用語であり、医師だけではなく、薬剤師も適用することを指摘している。さらに、精神疾患等との関連性を指摘する文献も多々ある。
(2)ドクターショッピング行動の正体とは?
ドクターショッピング行動に関する研究を整理する。
Sato et al.(1995)は、大学病院の一般外来1,088名を対象にドクターショッピング行動のアンケート調査を行った。その結果、23%がドクターショッピングの基準を満していた。ドクターショッピング行動の要因は、「病気の慢性化」「医師の説明を理解できない」「医師の診断と治療への不信」であった。結論では、医師がケアを提供するにあたり、「正確な説明」「ドクターと患者の良好な関係の維持」が重要であることを指摘している。
Kasteler et al.(1976)は、ユタ州ソルトレイクシティの576 家族1,897 人から、ドクターショッピングの要因に関する実証分析を行った。その結果、ドクターショッピングをしている家族は43%であり、ドクターショッピング行動の要因は、「医師の能力に対する信頼の欠如」「医師の患者との嫌々ながらの話し」「医者に対する嫌悪感」「サービスの高コスト」「不便な場所」「医師の個人的な資質による不適切な態度」であった。
結論として、ドクターショッピング行動は、第1に「医師と患者の不十分な関係」によりおこっていた。第2に、「構造的な問題(長い待ち時間、高い手数料、医療施設の距離)」は、医療施設を利用するうえでの障壁となっていた。また、コストと利便性、医師による患者への好意的な態度がドクターショッピング行動を減少させていた。