(※画像はイメージです/PIXTA)

お客様の満足のため「1個在庫・多品種展示」、「料理道具ヲタク」のいる店とメディアで取り上げられ、業績は増収増益へ。有頂天になっている社長に突きつけられた集団辞職が…。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

ある日突然、「集団辞職」が始まった

■まさかの集団辞職で天国から地獄へ

 

お客様の満足のために効率を捨て、1個在庫・多品種展示を選び、実際に道具を使って販売する「料理道具ヲタク」のいる店として、飯田屋はさまざまなメディアに取り上げられました。世間からは「いい会社」と褒めたたえられるようになったのです。

 

お客様もどんどん増え、業績は増収増益へ。そんな変化に、会社がいい方向へ進んでいる手ごたえを実感していました。

 

ところが、ある日突然、悪夢のような集団辞職が始まります。

 

実はその当時、社内の雰囲気は最悪でした。従業員休憩室からは絶え間なく愚痴や批判の声が漏れ、仲間の陰口を叩く者、同僚のミスを笑う者、人の足を引っ張る者がはびこり、従業員を募集してもすぐに辞めてしまう状況が続いていました。

 

「世間から注目されるこんな〝いい会社〞で働いているっていうのに、どこに不満があるんだ!? 売上も上がって、未来は明るいはずなのに!」

 

彼らの態度を理解しようとするどころか、憤りすら感じていたくらいでした。

 

そんな僕を嘲笑うかのように、その日は突然やってきました。役職者である営業課長を含む半数を超える社員が一斉に「辞めたい」と言い出したのです。

 

「なぜ辞めるんだ?」と理由を尋ねると、「実家の母の体調が悪く、介護が必要になったため辞めたい」と言います。介護であれば仕方ないかと渋々了承し、ほかの社員にも退社の理由を尋ねます。

 

すると、「実家の母の体調が悪いため辞めたい」と同じ理由。ほかの社員も一様に「家庭の事情があって」と言います。なぜ、こうも一斉に家族の具合が悪くなるのか……。

 

僕は、彼らが辞めたい本当の理由をまったく理解できずにいました。なぜなら、経営状況はかつてないほどの改善に向かっていたからです。いよいよ、従業員の給与を上げることも、待遇を改善することもできる時期にさしかかっていました。

 

「ここで辞めたらもったいない!」と、必死に彼らを引き止めました。

 

でも、「一刻も早く辞めたい」の一点張りで、まるで聞く耳を持ってはくれません。「せめて次の従業員が決まるまで働いてほしい」とお願いし、渋々勤務を続けてもらうような状況でした。

 

そんな中でも、メディアからの取材依頼は絶えません。飯田屋をこれからもっと「いい会社」にしていくために、メディア対応に追われる日々を過ごしました。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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