飯田屋の目的は目の前のお客様を喜ばせること。

多くの企業では従業員に実力より高い目標を与え、能力を上げながら売上を伸ばそうとします。しかし、ときとして売上目標は目の前のお客様に真摯になれない一瞬を生みます。なぜ売り上げ目標をやめたら売上が3倍増、客単価は2倍になったのでしょうか。飯田屋6代目店主が著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)で解説します。

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売上目標をやめたら売上が上がった

飯田屋では売上目標を設定するのをやめました。

 

売上目標という数字が目の前にチラつくと、お客様の顔を見なくなります。飯田屋の目的は売上を上げることではなく、目の前のお客様を喜ばせることです。

 

数字は後からついてくるものであり、目的や目標にしてはいけません。この順序を間違え、もし売上が目的になったら、その会社の価値は半減するでしょう。

 

だから、飯田屋では売上目標をやめました。そして、お客様を喜ばせようと努める従業員には、目に見えない報酬を与えることを意識しました。目に見えない報酬とは、まわりからの感謝や賞賛、自己成長、安心できる居場所の提供などです。

 

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多くの企業では従業員に実力より高い目標を与え、能力を上げながら売上を伸ばそうとします。しかし、ときとして売上目標は目の前のお客様に真摯になれない一瞬を生みます。

 

その一瞬が、心に大きなしこりをつくります。売上を達成するためにつく小さな嘘の積み重ねは、想像以上に僕たちの心を傷つけていきます。そのため、売上目標がなくなった途端に、しこりを解消し心の傷を癒やそうとして怠けてしまうのです。

 

それならば、初めからお客様を喜ばせることを目標とすればいいのです。少しの嘘も必要のない売場で、いい人が、いい人のまま、いい仕事ができる、いい店であり続けることに力を注いだ結果、飯田屋は創業以来最高の売上成績を記録しました。

 

2009年から2020年までの11年間で、売上高は300%近く増加し、経常利益額は数百万円の赤字から飯田屋史上最高の黒字額となりました。2500円ほどだった客単価は5000円ほどに上昇し、買上点数も大幅に増えました。

 

楽しんでお買物をしてもらえるよう取り組んだ結果、お客様の警戒心がなくなり、会話も増えたことが要因だったように思います。従業員どうしが協力しあうので、店の雰囲気がよくなったことも関係しているかもしれません。

 

また、圧倒的にリピート客が増えました。

 

料理道具は、持ち帰って料理をしてようやく良しあしを確認できます。使用して満足していただいたところから、初めて飯田屋との関係がスタートするとも言えます。

 

売上目標がないからこそ、お客様に心から満足してもらえる道具をおすすめできるのです。おかげさまで、今ではメディアを見てご来店になる方もいますが、SNSなどのクチコミで知ったという方も増えています。

 

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※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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