家の管理や介護などを、きょうだいがそれぞれ担当した結果、生前にしていた相続の約束と異なる遺産分割を主張することがあります。このような状況に陥ったら、どこに相談するのがよいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、遺産分割を家庭裁判所に相談するケースについて解説します。
父親の相続
英之さん(55歳・男性)から父親の相続手続きについて、相談がありました。母親は5年前に亡くなっており、そのときは父親が中心に手続きをしました。母親の財産は預金程度で申告の必要もなく、父親がすべて引き受けましたので、何も問題なく終わったといいます。
今回は姉(50代)と妹(40代)と英之さんの3人が相続人です。遺言書はないので、3人で遺産分割協議をしないといけないのですが、それが思うように進まないのでどうすればいいかと英之さんから相談がありました。
家は姉が管理
父親の財産は評価が1,500万円の自宅と預金です。自宅は近くに住む姉が相続する予定になっており、英之さんと妹も合意しています。英之さんはすでに自分の自宅があり、妹は海外に居住しているため、賃貸住まいの姉が相続することは父親の生前から言われていて、母親が亡くなったあとは姉が父親の食事のサポートなどをし、家の管理もしていました。
父親の介護
父親は亡くなる1年ほど前から体調を崩し、入退院を繰り返していました。姉は仕事をしていて、つきっきりで看病することは難しいため、亡くなる2ヵ月ほど前から妹が日本に帰り、父親の介護を担当していました。
妹の配偶者は外国籍で、夫の国で生活していますが、子どもはいません。そうしたことから妹が2ヵ月ほど近く父親の介護をすることができたと言えます。
預金がはっきりしない
妹が父親の介護をするようになり、預金も管理していました。通帳も妹が預かっていましたので、残高を知らせるように何度か催促して、ようやく3,000万円くらい残っているという返事がきました。
それ以上になると相続税の申告も必要になるため、早めに確認したいところですが、通帳を見せようとしないため、はっきりした金額が伝わってきません。
姉と妹は連絡を取り合っているようで姉、妹対英之さんという構図になっているようです。生前に父親が長女へ名義預金を渡したこともあり、その他の現預金もあるはずとのことです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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