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経営理論ではない、目の前の客を喜ばす
■目の前の人と目の前のことを大切にする
飯田屋で働いていて、「なんて自分は不幸なのか」「なんで僕はこんなに人に恵まれないんだ」と思っていた時期がありました。でも、実は「幸せな人」も「不幸せな人」もいなかったのだと思います。
あるのは「自分を幸せだと思う心」と「自分を不幸せだと思う心」だけだったのです。自分を不幸せだと思う心があると、どんなに恵まれている状況だとしても、何か自分にとってのマイナスを見つけて不幸せを探しはじめてしまいます。
「競合が多くて、なんて不幸なんだ」
「大企業のように資金がなくて、なんて不幸なんだ」
そして、一緒に働く仲間に対しても自分を不幸せにしているところを探します。
「自分はこんなに苦しんでいるのに、なんで一緒に苦しんでくれないんだ」
「自分はこんなに頑張っているのに、なんで頑張ってくれないんだ」
自分の苦しみをほかの人にも味わえと強要し、従ってくれなければいつもいらいら。それでは、みんなが離れていくのも仕方がありません。
僕はどこかで、仕事とは苦しまなければならないものと信じていました。
「大切な人の大切なことを大切にする」というシンプルな常識の実践をきっかけに、「なんて僕は恵まれていたのか」ということに気づけるようになりました。
「一緒に働いてくれる仲間がいる」
「わざわざ飯田屋を選び、ご来店してくださるお客様がいる」
「いつも僕の体を気にかけ愛情を注いでくれる妻と三人の子どもたちがいる」
「生涯の友がいる」
そして、「人生をかけて取り組める仕事がある」のです。
僕はまだ感謝し尽くせていません。
「競合が多くて、なんて不幸なんだ」という思いは、「これだけ同業の店があるからこそ、お客様がわざわざ足を運んでくださるんだ。しかも、飯田屋になければほかの店をご紹介できて喜びにつながるじゃないか」と考えられるようになりました。
「大企業のように資金がなくて、なんて不幸なんだ」という思いは、「お金がなかったから、お金がかからない知恵を働かせることができた。今後、どんなにお金がない状況になっても怖くない。それはもともとお金がなかったからだ!」と考えればいいのです。
感謝の心が育つと、自然とすべてをよい方向に結びつけられるようになったのです。
毎年のように新しい経営手法や、海外で話題のマーケティング手法が登場します。それが無価値とは思いませんが、興味がなくなりました。結局は、目の前のお客様を喜ばせられるかどうかだけなのです。
その点で、もっとも間違いないのは目の前の人、目の前のことを心から大切にすること。これに尽きるのではないでしょうか。それさえできれば、怖いものなどあるわけがないのです。
だから、僕は不幸せ探しをやめました。