コロナ感染拡大の影響によってアルバイトの回数が減らされてしまい、家賃が払えなくなってしまった事例が相次いでいます。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、実際のトラブル事例を紹介していきます。

「子どもが会いにきてくれるかなと思ってたんです」

「またコロナでアルバイトが減ってしまいました。もうダメだな。やっぱり引っ越さないとやっていけそうにありません……」

 

新型コロナウイルスで、安住さんのアルバイトはどんどん減っていきました。毎日のように求人を探しても、75歳では働ける場がありません。今までも知り合いのところで車を洗ったり、いろいろな力仕事をしていましたが、知人から仕事を減らされてしまえば、次の仕事の確保は難しいでしょう。

 

「頑張っていれば子どもが会いにきてくれるかなと思ってたんです。でももう決心がついた。引っ越し先が決まったら、また連絡します」

 

引っ越し後も滞納額を分割で支払っていかねばなりません。それも考慮しての家賃設定で、部屋を探してもらうことになりました。

 

「踏ん切りがついただけでも、新型コロナウイルスのおかげかもしれない」

 

今までお子さんのことを考えて、この物件で踏ん張ってきたことが、皮肉にも新型コロナウイルスによって方向転換を強いられることになりました。ただ安住さんにとって、長い目で見ればいい選択だと思います。

 

あとは貸してくれる物件が見つかるかどうか……。

 

「知り合いにも声をかけつつ、いちど役所に相談してみます」

 

収入が減りつつある中、75歳の安住さんの転居先が見つかるでしょうか。せっかく決意した心が折れないように、私も一緒に部屋探しをすることにしました。

 

約2カ月。安住さんの知り合いのご尽力で、幸運にも新天地が見つかったのです。新型コロナウイルスのせいで訴訟手続きが通常より大幅に遅れていたので、裁判の日よりも前の退去となります。明け渡しが完了すれば、訴訟も取り下げができます。早くの退去となれば、家主さんの負担も少なくて済みます。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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