「ここなら一人でも安心」娘に勧められて決めた住み替え
日曜日の昼過ぎ、恵子さん(仮名・74歳)はリビングの窓から外を眺めていました。
マンションの前の歩道を、小さな子どもを連れた夫婦が歩いていきます。少し離れた公園にも、家族連れの姿が見えました。
「休日になると、余計に目に入るんですよね」
恵子さんが現在のシニア向け分譲マンションへ移ったのは、2年前のことです。夫を6年前に亡くしてから、それまでは郊外の戸建てで一人暮らしを続けていました。
年金は月約15万円。住宅ローンはありませんでしたが、庭の手入れや家の修繕が少しずつ負担になっていました。
離れて暮らす長女の由佳さん(仮名・48歳)も心配していました。
「お母さん、階段もあるし、一人であの家にずっと住むのは大変じゃない?」
そんなときに見つけたのが、駅から徒歩圏内にあるシニア向けマンションでした。
館内はバリアフリーで、共用スペースもあります。フロントにスタッフがおり、緊急時の対応サービスも用意されていました。近くにはスーパーやクリニックもあります。
「ここなら一人でも安心だと思いました。娘にも『これで少し安心できる』と言われました」
戸建てを売却し、その資金の一部で部屋を購入しました。
入居直後は、新しい生活を楽しんでいました。同じ年代の住民とエレベーターで挨拶を交わし、館内で開かれる体操教室に参加することもありました。
しかし、暮らしが落ち着いてくると、以前とは違う寂しさを感じるようになりました。
平日はそれほど気になりません。買い物へ行き、図書館へ寄り、マンション内で顔見知りと話すこともあります。
ところが土日になると、由佳さんは夫や子どもとの予定があります。
「今週末は来られそう?」
恵子さんが電話で聞いても、
「ごめん、今週は子どもの予定があるの。また今度行くね」
と返ってくることが増えました。
恵子さんも、娘に毎週来てほしいと思っているわけではありません。それでも窓の外を歩く家族連れを見ると、自分だけ時間が止まったように感じることがあるといいます。
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