コロナ感染拡大の影響によってアルバイトの回数が減らされてしまい、家賃が払えなくなってしまった事例が相次いでいます。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、実際のトラブル事例を紹介していきます。

期限内に滞納額全額の支払いはできず…

ただし、現在(今後は高齢者が激増するので改善されると思いますが)、70代になると賃貸物件を借りることがかなり難しい状態です。お子さんが近くにいてサポートするとか、それなりの資産があるとか、よほど好条件が加わらないと、リスクが高いということで貸してもらえません。

 

年金だけでは生活費が足りず、貯金が潤沢にある場合でなければ、まずは万が一生活保護申請をするようになっても通る基準の物件に引っ越しして、働ける間はできるだけ働いて、どうしてもダメになったら足りない分を補塡してもらうというのがいちばんの得策になります。

 

安住さんのお気持ちは分かりますが、年金が家賃と同額となれば、いずれどこかで引っ越ししなければならない時が(宝くじが当たらない限り)やって来ます。今はまだお仕事をしている状況なので、ここがラストチャンスだと思うのです。

 

「年齢は75歳だけれど、まだまだ働いていますよ、だからお部屋貸してくださいね」

 

これなら、まだ借りられる部屋もあるはずです。私は一生懸命にこのことを伝え、安住さんに今のうちに引っ越しするように考えてとお願いしました。即答できない安住さんは、「しばらく考えます」ということで、この日は電話を切ったのです。

 

内容証明郵便での期限内に滞納額全額の支払いがなかったので、私は明け渡しの訴訟を提起しました。長年お住まいの高齢者の方に、訴訟という手段を使って出て行ってもらう、これは気持ち的にとても苦しいものです。

 

ただ一方で、家主もボランティアではありません。安住さんの場合、現状が劇的に改善される見込みもなく、むしろ悪くなる可能性しか秘めていないので立場上、仕方がないのです。

 

訴状が安住さんに送達された頃、また安住さんから電話がかかってきました。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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