働くお母さんたちの「保育園問題」…待機児童数減少で「悲痛の叫び」から「格差」にシフト?

働くお母さんたちの「保育園問題」…待機児童数減少で「悲痛の叫び」から「格差」にシフト?

女性の活躍が推進されている時代でありながら、多くの女性が出産や育児をきっかけに働くことを諦めている今の日本。その理由として、保育園を巡る問題が挙げられます。今回は、ベビーシッター事業、保育園事業、病院内保育園委託事業、企業主導型保育園のFC事業、人材育成・派遣・紹介事業などを展開する株式会社マザーグース代表取締役の柴崎方恵氏が、現代日本を取り巻く「保育環境」について解説していきます。

保育料の最高額は8万5700円、最安値で4万2700円

自治体では、認可保育園の保育料を家庭の所得に基づく市区町村税所得割課税額などに
よって決めています。

 

日本経済新聞社と日経DUALとの共同調査(2015年)によると、3歳未満の保育料の上限の平均は6万4167円ですが、いちばん高い自治体では8万5700円、一番安い自治体で4万2700円と、月額の保育料の差が4万円を超えることが分かりました。

 

さらに、モデル家庭として、次の条件を設定した場合の比較も行っています。

 

【モデル家庭の条件】
・夫婦の世帯年収700万円
・子ども一人
・中間層家庭(市区町村税所得割課税額が25万円)

 

このモデル家庭が2015年10月に入園した場合の保育料は、3歳未満の場合は平均4万4284円で、最高額は5万9900円、最低額は1万2400円となり、やはり自治体によって4万円以上の差があることが明らかになっています。

母の本音「何のために働いているのか分からない」

三つ目は保育時間です。条件は自治体により異なりますが、保育時間は1カ月の労働時間数によって「保育短時間」「保育標準時間」に分類されます。

 

育児休業からの復帰を考える際、正社員の場合は、短時間勤務かフルタイムかという選
択肢があります。すべてが赤ちゃん中心に動いていた生活から、会社で仕事をするという環境の変化は、お母さんたちにとって大きな変化です。いきなりフルタイムで復帰するのは、お母さん自身の体に大きな負荷がかかります。夜泣きをする時期であれば、仕事で体力を消耗しているうえに、睡眠時間も削られて疲れが蓄積していきます。

 

そういった事情を考えると、短時間勤務のほうがお母さん自身の体への負担は少なく、また保育園等に預ける時間も短くて済むので、預けられる子どもの負荷も小さくなります。

 

ただ、出産前に比べて勤務時間が短くなるということは、その分、収入が少なくなるということを意味します。収入と保育料のバランス、そして自分の体力と子どもの負荷を考え合わせて、お母さんたちは働き方を選択することになります。

 

四つ目はお子さんの年齢です。0~2歳は、一人の保育士が見られる子どもの数が少なく、必要とする保育士の数も増えるため、保育料は高くなります。

 

育児休業が明けて働く場合は、ほとんどが1歳前後になります。3歳以上になれば、幼児教育無償化によって家庭の負担は減りますが、育児休業から復帰後の2年程度は、支出が大きくなることになります。

 

0~2歳は手がかかるうえに、保育園に預けるとなると保育料は高く、保育園に通い始めても体調を崩すことも多くなりがちです。朝、保育園に預けるたびに大泣きされることもあります。

 

家計のために働くことにしたけれど、少しでも子どもとの時間を大切にしたいと短時間勤務を選択した結果、出産前より収入が減り、さらに保育料が出ていくことで手元に残るお金が少なくなってしまう……。そのような状況で働くお母さんたちの脳裏に浮かぶのは「何のために働いているのか分からない」という思いです。

 

 

株式会社マザーグース 代表取締役 柴崎 方恵

 

 

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柴崎 方恵

幻冬舎メディアコンサルティング

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