消費者保護という「社会的な流れ」が及ぼす影響
滞納に続く「社会的な流れ」の二つめは消費者保護という流れです。「弱者」保護とも言われています。
具体的には原状回復工事の費用負担の問題などがわかりやすい例です。滞納が、入居者が一方的に支払わないという性質であるのに対し、原状回復工事は「支払義務自体が争いになる」のです。
以前であれば、退去時点において入居者は入居した時点の状態まで戻す(原状回復する)のが当然とされていました。つまり、原状回復工事は基本的に入居者の負担で行う工事だったのです。しかし、現在は違います。
入居に伴って劣化したクロスや床の汚れは「家賃の対価」であるとして、基本的にはオーナー負担となってしまっているのです。これは、国土交通省のガイドラインや「東京ルール」に代表される条例においても定められています。
そのため、たとえ賃貸借契約書に「入居者負担」となる旨が明記してあったとしても、訴えられればオーナーは負けてしまうケースも多いのです。
このような消費者保護という流れのなかで、オーナーの費用負担増加は避けられません。まして、賃料(売上)が上昇する状態のなかであればまだしも、賃料が下がっていくなかでのコスト増はアパート経営を圧迫することになります。
最終的には最高裁で「有効」という形で決着しましたが、少し前は更新料の問題もありました。
更新料とは、1年もしくは2年に一度の契約更新時に、家賃の1~2カ月分を入居者がオーナーさんに支払うものです。
その支払う内容をお互いに合意し、賃貸借契約書に明記しているにもかかわらず、入居者が更新料を支払いたくないということで裁判を起こし、裁判で更新料が「無効」である(支払わなくてもよい)という判決が続いたのです。
更新料はオーナーさんにとって貴重な収入です。それを無効とされては、オーナーさんの収益は圧迫されるのは必至です。
更新料が無効である判決の根拠となったのは、平成13年施行の消費者契約法という法律です。また平成21年には消費者庁が設立され、入居者は消費者であり「弱者」であるから、守らなければいけない対象――という考え方が一般化しました。
アパートオーナーは「資産家」であり、「お金持ち」なのに対し、賃借人(入居者)は「弱者」だから守らなければいけない、というわけです。
このように、消費者保護という社会的な流れがアパート経営を行う上で非常に大きな「逆風」となっています。
需給のバランス(空室)、家賃等の滞納、消費者保護という三つの要素が重なり、いまはオーナーさんにとって厳しい状況であることは異論がないでしょう。本連載ではこれから、これらをうまく乗り越え、かわし、利益を上げていく方法をお伝えしようと思います。
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