「息子を応援したい」1,200万円の援助を提案したが…
「最初は、応援してあげたい気持ちしかなかったんです」
そう話すのは、関東地方で暮らす正夫さん(仮名・67歳)と妻の洋子さん(仮名・64歳)です。
夫婦の年金収入は月約28万円。現役時代にコツコツと貯めた預貯金は約6,000万円あり、住宅ローンもすでに完済。旅行や趣味を楽しみながら、比較的ゆとりのある老後を送っていました。
長男(38歳)は結婚を機に、都内近郊で住宅購入を検討していました。
「今の家賃を払い続けるより、早く買ったほうがいいんじゃないか、という話になって」
そうした流れのなかで、夫婦は頭金の一部として1,200万円を援助することを提案しました。
「自分たちも親に少し助けてもらったので、同じようにしてあげたいと思ったんです」
ところが、具体的な話が進むにつれ、違和感が生まれていきました。
最初は「頭金の一部」という位置づけだった援助が、いつの間にか「当然に出してもらえるもの」として扱われるようになっていったのです。
「このくらいの物件なら、もっと出せるよね?」
「家具や家電も最初はお金がかかるし…」
長男夫婦の言葉に、正夫さんは戸惑いを覚えました。
「金額の話だけじゃなくて、“出してもらって当たり前”という空気を感じたんです」
洋子さんも同様でした。
「援助って、あくまでこちらの意思でするものだと思っていたので…」
夫婦は一度、家計を見直すことにしました。
『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、平均可処分所得が月22万1,544円である一方、平均消費支出は月26万3,979円と、平均的には毎月の赤字が発生しています。
「今は余裕があるように見えても、この先ずっと同じとは限らない」
医療費や介護費、住宅の修繕費など、将来の不確定要素を考えると、大きな資金を一度に手放すことへの不安は無視できませんでした。
「1,200万円を出したあとに、何かあったらどうするのか。そこまで考えきれていなかったと気づきました」
