(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの住宅取得や結婚、出産といった節目に、親がまとまった資金援助を行うことは珍しくありません。一方で、その負担が老後の生活設計に影響を及ぼすケースもあります。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によれば、60代の二人以上世帯の平均金融資産は2,026万円とされていますが、実際には分布にばらつきがあります。どこまで支え、どこから自立を求めるべきか――その線引きに悩む家庭は少なくありません。

「息子を応援したい」1,200万円の援助を提案したが…

「最初は、応援してあげたい気持ちしかなかったんです」

 

そう話すのは、関東地方で暮らす正夫さん(仮名・67歳)と妻の洋子さん(仮名・64歳)です。

 

夫婦の年金収入は月約28万円。現役時代にコツコツと貯めた預貯金は約6,000万円あり、住宅ローンもすでに完済。旅行や趣味を楽しみながら、比較的ゆとりのある老後を送っていました。

 

長男(38歳)は結婚を機に、都内近郊で住宅購入を検討していました。

 

「今の家賃を払い続けるより、早く買ったほうがいいんじゃないか、という話になって」

 

そうした流れのなかで、夫婦は頭金の一部として1,200万円を援助することを提案しました。

 

「自分たちも親に少し助けてもらったので、同じようにしてあげたいと思ったんです」

 

ところが、具体的な話が進むにつれ、違和感が生まれていきました。

 

最初は「頭金の一部」という位置づけだった援助が、いつの間にか「当然に出してもらえるもの」として扱われるようになっていったのです。

 

「このくらいの物件なら、もっと出せるよね?」

「家具や家電も最初はお金がかかるし…」

 

長男夫婦の言葉に、正夫さんは戸惑いを覚えました。

 

「金額の話だけじゃなくて、“出してもらって当たり前”という空気を感じたんです」

 

洋子さんも同様でした。

 

「援助って、あくまでこちらの意思でするものだと思っていたので…」

 

夫婦は一度、家計を見直すことにしました。

 

『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、平均可処分所得が月22万1,544円である一方、平均消費支出は月26万3,979円と、平均的には毎月の赤字が発生しています。

 

「今は余裕があるように見えても、この先ずっと同じとは限らない」

 

医療費や介護費、住宅の修繕費など、将来の不確定要素を考えると、大きな資金を一度に手放すことへの不安は無視できませんでした。

 

「1,200万円を出したあとに、何かあったらどうするのか。そこまで考えきれていなかったと気づきました」

 

 \3月20日(金)-22日(日)限定配信/
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