(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金の不安は、多くの世帯に共通する悩みです。総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、平均可処分所得が月22万1,544円である一方、平均消費支出は月26万3,979円と、支出が上回る傾向にあります。そうしたなか、相続によって家計が大きく変わるケースもあります。

突然の相続で手にした“1億2,000万円”…戸惑いと現実

「こんな金額、見たことがない……」

 

そう口にしたのは、関東地方で暮らす和夫さん(仮名・67歳)と妻の恵美子さん(仮名・64歳)です。

 

夫妻の年金収入は月約20万円。現役時代に大きなぜいたくをしていたわけではなく、退職後は慎ましい暮らしを続けてきました。住宅ローンは完済していたものの、貯蓄は1,000万円に届くかどうかという水準。旅行は年に一度近場へ行ければ十分、外食も特別な日だけという生活でした。

 

「毎月の生活はなんとか回るけれど、家の修繕や病気が重なったら厳しいだろうな、とは思っていました」

 

そんなある日、恵美子さんの伯母が亡くなりました。

 

伯母は都内に土地付きの自宅を持ち、夫に先立たれ、子どももいませんでした。恵美子さんは以前から身の回りの世話や通院の付き添いをしており、晩年は特に頻繁に行き来していたといいます。

 

「遺産の話は特にしていませんでした。元気なうちに『この家もどうなるのかしらね』くらいの話しかしていなかったんです」

 

ところが伯母は公正証書遺言を残しており、主な財産を恵美子さんに相続させる内容になっていました。

 

相続の対象となったのは、伯母名義の預貯金に加え、都内の実家を売却した代金でした。遺言執行や名義変更、売却手続きなどを経て、最終的に恵美子さん名義の口座に振り込まれた金額は約1億2,000万円。通帳を記帳した和夫さんは、その場で目を疑ったといいます。

 

「何度見ても、桁を数え直してしまいました」

 

夫婦にとって、それは人生で見たことのない金額でした。普段使っていた口座の残高はせいぜい数十万円から数百万円。そこに一気に億単位の数字が並んだのです。

 

「うれしいというより、怖かったですね。本当にこの金額を自分たちが持っていいのか、という感覚でした」

 

ただし、すべてがそのまま自由に使えるわけではありませんでした。

 

相続では、遺産の総額や法定相続人の数によっては相続税が発生します。国税庁によると、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。遺産がこれを超える場合、申告と納税が必要になります。

 

「税理士さんに相談して、納税分は絶対に手をつけないよう別口座に移しました。最初に言われたのは『慌てて使わないでください』ということでした」

 

 \3月20日(金)-22日(日)限定配信/
 調査官は重加算税をかけたがる 
相続税の「税務調査」の実態と対処法

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