コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増える中、マンションやアパートではゴミに関するトラブルが深刻化しています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、事例を紹介していきます。

「レベルが高いな」そう思っていたのに…

中居さんは、延々とゴミステーションから溢れたゴミの整理をしましたが、正しく分別して捨てられていたのは全体の20%ほどでした。2時間ほど作業したでしょうか、ゴミ収集車がやってきてしまいました。

 

「すみません、分別をした分だけ持って行ってください」

 

大半のゴミがそのままゴミステーションに残されたままの状態で、一部を差し出すと、回収の人は苦笑いをしながらこう吐き捨てるように言いました。

 

「この物件だけじゃないですよ。今はどこも断捨離なんですかね。分別なんて全くされてないです。悪質な捨て方を見ていたら、私たちが馬鹿にされている気がしますよ」

 

ゴミ収集車も、すでにキャパオーバーに見えます。回収してもらえず大量に残されたゴミを前に、中居さんは大きなため息をつきました。今日はこのゴミとの闘いだ、諦めた中居さんは作業着に着替えるため一旦家に戻ることにしました。

 

とても不思議な感覚になりました。自分の物件に住んでくれている入居者たちは、マナーも良く、家賃滞納もなく、入居者同士のトラブルもありませんでした。それがなぜ……。家主仲間からゴミ問題の相談を受けても、経験がないため「うちの入居者さんたちは、レベルが高いな」そう思っていたのにです。亡き父から受け継いだ賃貸業で、初めての壁にぶち当たった気分でした。

 

初老と言われる年齢になった自分の勘違いかもしれない。作業着に着替えて物件に戻った中居さんの、そんなほのかな希望は打ち崩されました。勘違いではなく、回収してもらえなかったゴミは、そのままゴミステーションの前にうずたかく積まれています。

 

仕方がない……。中居さんは覚悟を決めて、ゴミの整理を始めました。今や不用品をネットで売る時代。きちんと綺麗にすれば、お金になりそうな物もあります。例えば女性用のバッグ。確かに形は少しレトロですが、色が剥げ落ちたところも補修すればまだ使えます。

 

同じように靴もたくさん捨てられていました。子ども用の運動靴も、洗って泥を落とせば欲しい人はいるかもしれません。特に子どもは成長が早く、同じサイズの靴を履ける期間はほんの僅か。それを考えれば、少しの手間でゴミがお宝になるのです。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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