コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増える中、マンションやアパートではゴミに関するトラブルが深刻化しています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、事例を紹介していきます。

「代々繫いでいきたいと思っていましたが…」

中居さんに同情もしますが、いきなりゴミの封を無断で開ける行為は、確かにプライバシーの侵害行為になりかねません。

 

こういった場合、まずは入居者の方々に対しこのような警告を行い、その上での開封が望まれます。

 

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一部の入居者において、ゴミの分別がされていないことが判明しました。心当たりの方は出されたゴミを一旦持ち帰り、分別したのちお出しください。このようなことが繰り返されますと、ゴミ袋を開封してゴミの持ち主を特定せざるを得ません。そのようなことがなきよう、よろしくお願いします。

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ただ現に分別されていないゴミが氾濫している以上、作業せざるを得ないところも仕方がない部分ではあります。そこで現状の写真をたくさん撮ってもらい、その写真も載せた上で「このような状態であるため、急遽、ゴミ袋を開封し分別いたしました」という書面を各戸に投函してもらいました。

 

ゴミをこのまま放置したとしても回収してもらえず、悪臭を放っている以上、緊急性があるからです。書面を出すことで、入居者への警告と理解を得る両面を狙いました。また明らかに粗大ゴミと思える大型ゴミも、費用を払っていない様子だったので、中居さんは仕方なく行政に連絡をし、費用を払って引き取ってもらいました。

 

そして誰がどのゴミを捨てたのか分かるよう、防犯カメラも設置しました。そこまでしたことが功を奏したのか、中居さんの所有する5つの物件は少しずつ違法なゴミ捨てが減っていきました。

 

「かかった費用ですか? ゴミステーション以外にも、これをきっかけに防犯カメラを設置しましたから正確ではないでしょうが、50万円はかかりましたね。もちろん月々の費用もこれからかかってきます。でも費用がかかったとしても、もう白い目で見られながらのゴミ整理はこりごりなんです」

 

長年賃貸経営を誇りに思ってきた中居さんですが、今回を機に子ども世代に家主業を引き継がせるかどうか、真剣に考え出したと言います。

 

「親父の代からの家主業ですからね。できれば代々繫いでいきたいと思っていました。ただ今回のことは、自分では想定外だったし、何よりも大切な入居者から裏切られた気もするし、一生懸命に分別している自分を労うどころか訴えるぞ!みたいな勢いに、力が抜けました。売却するのか、経営の仕方をガラッと変えていくのか。ゆっくり子どもたちと相談していこうと思います」

 

新型コロナウイルスからのゴミ問題は、中居さんのこの先を考えるきっかけになったと苦笑いしながら語ってくれました。

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

 

太田垣 章子

OAG司法書士法人代表 司法書士

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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