コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増える中、マンションやアパートでは生活音に関するトラブルが深刻化しています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、騒音トラブルの事例を紹介していきます。

「面識ですか?どこの部屋の人かも知らないです」

ところが被害者の男性(30代前半)に聞くと、自分はひとりで寝ていたので怒鳴り込まれるような音を出しているはずはないと言うのです。インターホンに起こされて不機嫌ながらドアを開けたら、包丁を持った女性が立っていたそうです。 

 

女性は勝手に騒音だと騒ぎ立てたのでしょうか。それともその女性だけに、何かが聞こえたということでしょうか。

 

 

「とにかく包丁に驚いて固まりました。あまりに怖くて声が出なくて。そうしたら女性にうるさいって言われたんです。だから寝ていたので音はしていないと思いますよ、とは言ったのですが。そうこうしている間に警察が来てくれて、ホッとしました。女性と面識ですか? 同じマンションなので顔を合わせたことはあると思いますが、どこの部屋の人かも知らないです」 

 

さらに驚くべきことは、女性はその後も包丁を振り回して上の階に行き続けたのです。しかも被害者はいつも同じ上の階に住む男性です。男性曰く、家にはテレビもないし、音も出していない、運動もしたことがない。ただ座ってリモートで仕事をして寝るという、いたって静かな生活とのことです。 

 

建物は鉄筋コンクリート造り。日常生活で音が響くような造りではありません。加えて事件はいつも深夜。毎回男性が寝ている時間帯です。

 

「包丁も怖いけど、逆にそっちは少しずつ慣れてきて、それよりも安眠妨害されることの方が辛かったです」 

 

女性は訪問の度に、うるさいと言うだけだそうです。感情を荒立てられて、包丁を振りかざされると困るので、男性は毎回寝ていたと伝えるしかなかったということでした。 

 

当然ながらその度に警察が呼ばれ、女性は警察官に促されて階下に連れ戻されるということの繰り返し。そして住民たちはまたか……といつまで経っても事を収められない管理会社の安部さんを責めました。 

 

そして同時にこの包丁女を退去させて欲しい、そう嘆願してきたのです。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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