上の階の男性は不眠症に…引っ越し費用は家主負担?
「もともと女性は、精神的に何か抱えていたのかなぁ。それともコロナで追い詰められちゃったんだろうか。上の人はただ寝ているだけっていうのに音がうるさいとなれば、これは女性側に問題があるとしか思えないよね」
ため息交じりで、安部さんは言います。
「そうこうしているうちに、上の男性が退去したいって言いだして。そりゃそうだよね。毎日緊張の連続だから。不眠症になったって言ってたなぁ。先方からしたら当然なんだろうけど、引っ越しの費用を要求されちゃってね。今家主と金額の調整をしているところです。ほんと家主からしたら、踏んだり蹴ったりですよ」
結局その物件は、男性が退去した後も、未だ新しい入居者を募集できずにいます。今のところ女性は大人しくしていますが、家主は、包丁を振り回した入居者が階下にいるということを告知しないといけないのでは、というところで募集を躊躇(ちゅうちょ)してしまっているのだそうです。むろん告知してしまえば、入居を希望する人などいないことでしょう。
仮に秘して新しい入居者を確保できたとしても、「聞いていたらこの物件を選ばなかった」と言われかねません。そうなるとまた転居費用だの、損害賠償だの、事態はややこしくなるだけです。
住まいは安心すべき場所。そんな場所にこんな女性がいたら……。一定期間様子を見て、大人しくしている実績ができたら、その時に募集を始めるということでした。
家主の損失は、転居した男性への費用負担と、空室期間の賃料を合わせれば、軽く100万円を超えてしまいます。「コロナで先行きも分からない中、お金の負担も痛いけど、それ以上に本当に事件にならないか、寝られない日々ですよ」
家主の悩みも尽きません。2
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士
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