出来ないことだらけ…の危機を覆す考え方とは
危機に際しては無力な自分と向き合う
危機からの復旧はまず確かな情報を取ることだろう。そのうえで問題点を見つけ、問題を解決する対処策を考える。そうして、実行する。
繰り返しになるが、これが危機管理の通常の手順だ。
どの組織も通常の手順があることはわかっている。しかし、「わかっている」のに、危機管理と対処ができる組織とできない組織がある。
わかっているのに、なぜ「できない」のか?
知っているのに、なぜ「できない」のか?
やり方、手順が書いてあるマニュアルも整備してあるのに、なぜ「できない」のか?
それは経験の差だ。わかっているのと、やったことがあるのとでは天と地ほどの違いがある。
わかっているメンバーだけでなく、やったことのあるメンバーを入れなければ危機管理はできない。
そして、ただ、やったことのあるだけのメンバーでもダメだ。実際に危機に直面して、なんとか乗り越えようとして、策を考え、力を尽くしても功を奏さなかった経験を持っている人が必要だ。
危機に際して、最初に立案したプランがそのまま通用することはない。何度、立案しても通用しないことがある。危機管理に向いているのは挫折体験を持っている人間だ。
挫折した経験を持った人間は打たれ強い。無力感を感じた後、打たれ強くなった人材がもっとも危機管理に向いている。
友山、朝倉、尾上……。トヨタの危機管理人たちはかつて現場に行った経験がある。失敗もしているし、無力だった自分と向き合ったことがある。だから、「できないこともある」とわかっても、まったく動揺しない。
できることだけをやればいいと思っている。危機管理、対処は百点満点にはならない。その場で短時間にできることをやる。それがトヨタの危機管理、対処だ。