コロナ禍において、トヨタの生産現場以外の職場では、在宅勤務を増やすなど多くの施策が行われた。新型コロナ危機以前の勤務体制は、トヨタに限らず、小さな子どもがいるママワーカーの負担が大きいものであった。在宅勤務は「生活の質」を向上させるものであるが、現状ではオフィス勤務の方が生産性が高いという意見が多くみられる。在宅勤務の生産性を上げるにはどうすればいいのか。※本連載は、野地 秩嘉氏著『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

トヨタ事技系の「新型コロナ」に対する施策・危機管理

トヨタの生産現場では危機管理人が毎朝、大部屋で会議を開き、サプライチェーンをつなげる努力をした。一方、事技系と呼ばれる工場以外で働く、技術、経理、人事、調達、営業、情報システム、広報、宣伝といった職場では、密を避けるために在宅勤務を増やした。

 

具体的には次のような施策を行っている。

 

●対面での勤務を防ぐためにそれぞれの席に飛沫防止パネルを設置。

●職場での3密を防ぐために、時差出勤と部分的在宅勤務の推奨。なお、4月のある時期、名古屋地区、豊田本社の従業員の一部に関しては日進にある研修センターのなかにサテライトオフィスを設けた。これは後述するけれど、パソコンがない、通信環境が不安定な従業員のためのものだったが、現在は閉鎖された。

●職場によっては事前に出社率を把握し、一定の目標値を定めて在宅や勤務場所の変更を指示する。

 

トヨタでは当初、在宅勤務が思うように進まなかったという。(※画像はイメージです/PIXTA)
トヨタでは当初、在宅勤務が思うように進まなかったという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

次に国内外への出張、海外赴任、帰任の考え方はかなり厳しいと言える。

 

●国内の出張については不急のそれは控える。会議アプリで代替できるものはそれで行う。

●日本からの海外赴任については2020年10月までは慎重に判断し、ほぼやめていた。これは海外出張も同じである。海外間の出張については各地域の判断だけれど、不要不急の出張は禁止。要するに、世界のどこでも在宅勤務が進み、会議アプリを利用して仕事をしていることになる。

●日本から海外工場の支援に行った従業員は休日もホテルから出ないようにする。渡航前には現地の状況、生活環境を会社側上司からも家族に丁寧に説明して、従業員だけでなく、家族の不安も払拭する。

 

ここで大切なことは「家族に対しての説明」だ。新型コロナ危機にある現在、海外出張、海外赴任をする時、不安なのは本人だけでなく家族も同様だ。まして、小さな子どもがいる場合、残る人たちは心細いだろう。危機管理とは、そこまで細かい心遣いをすることでもある。

 

最後に付け加えると、食事会、親睦会といったものはほぼ行われていない。行われる場合でも多人数のそれはありえない。せいぜい、4人までではないか。

 

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