いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

資金繰り改善の経費削減、借り入れ、補助金…

課題の解決につながる情報を幅広く持つ

 

課題解決の提案に関しても、最初は士業としての専門分野から始めるのがよいでしょう。

 

私の場合は会計と税務が専門なので、資金繰りや税金といった数字の相談から入ることが多いです。先方から相談されなくても、決算書を見れば多額の税金がかかる、あるいは資金繰りが苦しいといったことはわかるので、その点に関して質問し、じっくりと話を聴いたうえで経営課題を明確にし、その状況を改善するための提案をします。

 

たとえば、資金繰りが苦しい場合、公認会計士や税理士の提案として多いのは、経費の削減、銀行からの借り入れ、借入金返済のリスケジュール、売掛金と買掛金の決済サイトの見直し、換金性の高い資産の売却、補助金や助成金の獲得などです。これらについて詳しくなり、いくつか事例を経験してきちんと提案できることがまずは重要です。

 

資金繰り改善の方策①「経費節減」

 

経費削減は即効性がある資金繰りの改善方法の一つです。電気代、水道代、通信費、コピー代などは比較的簡単に削減できますが、数百万円から数千万円の経費削減になる場合もあります。こうした経費削減は提携先の経費削減業者に無料診断を依頼して、削減可能と判断されたら手続きをお願いしています。クライアントは削減できた金額の一部を報酬として支払うため、クライアントは得こそしますが損をすることはありません。

 

これらの経費削減は具体的な数字で効果を把握できます。こうした明らかな成果が出る提案をして信頼を得ることができると、より深く経営に関われるようになります。

 

資金繰り改善の方策②「借り入れ」

 

銀行からの借り入れや、借入金返済のリスケジュールで資金繰りを改善につなげるためには、財務状況を勘案して銀行とどのように交渉を進めるべきかを助言して、事業計画書の作成などを支援します。そのためにも各金融機関の法人営業担当者と接点を持ち、融資実行の際の重要なチェックポイントや有利な条件で借りるための制度について把握します。

 

さらにクライアントには銀行の法人営業担当者を紹介し、面談に同席してさまざまなフォローを行います。銀行からの借り入れは、法人営業の担当者経由で申し込むと、窓口から申し込む場合と比べてその後の手続きの負担がずいぶんと軽くなり、融資が通る可能性も高くなります。そのため金融機関の法人営業担当者との結びつきを強化するだけで大きな付加価値となります。

 

銀行の法人営業担当者は法人の融資先を必死で探しています。そのため、士業から「借り入れを希望している会社を紹介したい」と言われれば喜んで会ってもらえます。また、メガバンクよりも地方銀行や信用金庫、信用組合のほうが少額の融資でも柔軟に対応してくれますので、中小企業の借り入れを支援するうえではそういった金融機関がお薦めです。

 

資金繰り改善の方策③「補助金・助成金申請」

 

補助金や助成金の獲得も資金繰りの改善につながります。申請さえすれば高い確率で獲得できる補助金や助成金もあるのに、情報を知らないだけで取得機会を逸している企業が非常に多いのが現状です。前出の行政書士の石下氏が運営するサイト「みんなの助成金」では、補助金や助成金の情報がタイムリーに入手できます。こうした提案は資金繰りに困っている会社のみならず、ほとんどの会社に喜んでもらえる付加価値の高い提案です。

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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