いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

採用の課題から入り、経営課題に踏み込んだ例

経営課題に踏み込む会話例

 

経営課題に踏み込む具体的な会話の進め方について、ご紹介します。

 

士業「採用して人が増やせれば、売上を伸ばせるという話でしたね。そうすると、御社の魅力を応募者に伝える方法を考える必要がありますが、御社の魅力を表現するとしたら、どういったことが表現できそうですか?」

 

経営者「そうですね、弊社の魅力は……(詳細に説明)」

 

士業「なるほど。この点について従業員の方はどのように話していますか?」

 

経営者「従業員ですか、どうでしょう。聞いたこともありませんでした」

 

士業「社内で採用に関する会議は行ってはいないですか?」

 

経営者「特にしていません。自分一人で考えています」

 

士業「それは、採用も含めて、会社の経営に関しては基本的に社長が一人だけで考えているということですか?」

 

経営者「自分以外の従業員は全員エンジニアで、彼らにはひたすらホームページの制作をやってもらっています。ですから、経営に関して相談する相手はいないのが正直なところです」

 

士業「なるほど。今の人数からさらに人を増やすとなると結構な人数になりますが、その人数だと戦略的に組織を作っていかないと、いずれ限界がくるかもしれないですね。私が関与する会社も以前は組織作りを深く考えずに人を増やした結果、社長が一人で経営と現場の両方を対応する状況が限界を迎えて、大事な連絡の返信を忘れたり、現場への指示が不十分になったりして、トラブルが頻発する状況に陥っていました」

 

経営者「そうですか。弊社も実はそんな懸念もあるんです」

 

士業「なるほど。組織体制の構築や経営の運営方法についてお役に立てる情報を提供できると思いますので、一度、ランチでもいかがですか。いろいろな会社の経営に関与しているので、守秘義務の範囲内でよければ他社事例もお話しできると思います」

 

経営者「それはぜひお聞きしたいですね。お願いします」

 

これからの士業は経営者が抱える悩みについて詳しくなることが重要だという。(※写真はイメージです/PIXTA)
これからの士業は経営者が抱える悩みについて詳しくなることが重要だという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この会話では、採用の課題から入り、組織体制に関する質問をすることで経営課題に踏み込んでいます。組織体制について、「社内で経営の相談ができる相手はいますか?」という聞き方では少し直接的すぎるので、「採用に関する会議は社内では行っていないですか?」という間接的な聞き方から組織体制を把握していきます。

 

さらに経営の相談相手やナンバー2がいない、組織体制が整っていないという経営課題を確認できれば、次にそれがいかに問題であるかを認識していただくための事例を話しています。この事例が話せるかどうか、つまり例証ができるかどうかで説得力は大きく変わります。そのためにも経営者が抱える悩みについて詳しくなることが重要です。

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