いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

日々の業務と未来を見据えた行動の両立を

「未来の仕事」のための環境を整える「今の仕事」と「未来の仕事」

 

常にアンテナを張り、市場の変化に応じて迅速かつ柔軟に変化し続けることの重要性はこれまでお伝えしてきた通りです。

 

しかし新しい戦略を立てても、実行に移すのは容易ではなく、いつまでも後回しになってしまいがちです。そこで、仕事を「今の仕事」と「未来の仕事」とに分けて、日々の業務と未来を見すえたアクションを両立させる取り組みが必要です。

 

ここでいう「今の仕事」とは、顧問先との打ち合わせや各種書類の作成、メール処理など、日々の売上を得るために必要な仕事です。

 

将来も会社成長、発展していくために「未来の仕事」は大変重要になってくるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
将来も会社成長、発展していくために「未来の仕事」は大変重要になってくるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一方、「未来の仕事」とは、未来においても会社が成長、発展していくようにするための仕事です。未来の仕事には、将来性のある事業や業務への着手、業務提携、人の採用や育成、経営理念や人事評価項目などの見直し、新たな可能性を広げるための勉強会や交流会への参加、新たな動きに必要な知識や実務能力の習得、ウェブでの発信手段の整備、新たなコンテンツの作成などが挙げられます。

 

市場が激しく変化する時代においては、「未来の仕事」の重要性がより高くなります。変化する市場への対応が遅れると、後々の経営やキャリアにも大きく影響します。今はそれほど市場の変化が感じられなかったとしても、あと5年も経てばほとんどの士業の業界で状況は大きく変化しているでしょう。技術はさらなる速度で進歩し、その技術の導入によって業務の効率化、自動化を後押しすべく、国や自治体はインフラを整備し、ルールを変更・緩和していきます。

 

「未来の仕事」ができているか

 

私は就寝前に一日の仕事の内容を振り返り、「未来の仕事」ができたかどうかを評価します。もし「未来の仕事」がまったくできていなかった場合は、そこからパソコンを立ち上げ、少しでも「未来の仕事」をしてから寝るようにしています。そこまで強く意識しないと「今の仕事」に追われて、「未来の仕事」はおろそかになりがちです。

次ページ「未来の仕事」ができない3つの理由は
経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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