新型コロナウイルスが巻き起こしたのは「世界的流行(パンデミック)」だけではない。様々な情報が錯綜し、なかには作為的に流される「危険なウソ」も少なくない。筆者は過激なフェイクニュースが流れつづけるアメリカに住んでおり、今まさにウソ情報の氾濫を実感している身だ。ウソを見抜き、正確な情報に基づき「命を守る行動」を取るにはどうすればよいのか。日本でワクチンが接種開始となった今、知っておくべき「インフォデミック」の実態を解説する。

「ウソ情報ほど急拡散され、鵜呑みされる」という報告

どうして、このような偽りの情報が拡散するのでしょうか?

 

2018年に科学誌「サイエンス」に、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院シナン・アラル教授らは、「偽りは真実よりも早く広がる」ことを報告しました。

 

教授らは、2006年から2017年に、ツイッターで出回ったニュース(ウソか本当か検証済のもの)について、拡散の違いを調査しました(※5)。このデータには、300万ユーザーにより450万回以上ツイートされたニュースが約12万6,000件も含まれています。

 

偽りの情報は、すべての情報カテゴリーにおいて、真の情報よりもはるかに遠く、速く、深く、広く拡散していました。偽りのニュースは真のニュースよりも奇抜で、実は人々は奇抜な情報ほど共有しやすいことがわかりました。

 

さらに、偽りの話は、恐怖や嫌悪感、驚きといった感情を引き起こしましたが、真の話は期待や悲しみ、喜び、信頼という感情を生み出すということもわかりました。

 

また、拡散しているのは、偽りの情報を広めるようにプログラムされている「ボット」ではありません。「人間が不正確なニュースをリツイートする」からこそ、ニュースが速く広がるのです。

 

たとえば1,500人に情報を拡散を拡散するためには、真のニュースは偽りのものより約6倍もの時間がかかります。真のニュースが1,000人以上にリツイートされることはめったにありませんが、その一方で偽りのニュースの上位1%は、1,000〜100,000人に共有されていました。

 

※5 https://science.sciencemag.org/content/359/6380/1146

ソーシャルメディアで広がる「ワクチン反対派」

フェイクニュースが氾濫するなか、2020年10月の医学雑誌ランセットの専門誌『ランセット・デジタルヘルス』によると、英ロンドンと米ワシントンDCに事務所をかまえる国際的な非営利組織「デジタル憎悪対策センター(CCDH)」は、ソーシャルメディア企業が、ワクチン反対運動を許可していることを非難しています(※6)

 

CCDHによると、いわゆるワクチン反対派がもつソーシャルメディアのアカウントは、2019年以来で少なくとも780万人のフォロワーを増やしているとのことです。Facebookでは3,100万人がワクチン反対グループをフォローしており、さらに1,700万人がYouTubeで同様のアカウントを登録しています。

 

CCDHは、こうしたワクチン反対運動の広がりによって、コロナワクチンの展開が損なわれる可能性があると警告しました。1,663人を対象とした調査では、パンデミックに関する情報入手をソーシャルメディアに依存している個人は、よりワクチン接種を躊躇する傾向にあることがわかりました。

 

またCCDHによると、オンライン上のワクチン反対運動には4つのグループ(時には重複することも)があります。

 

1つ目は、ワクチンへの不信感を促すためにフルタイムで働くグループ。ただし、ワクチン反対運動に関心をもつ人の12%にしか到達しません。2つ目は、起業家のグループ。これはワクチン反対運動に関心をもつ人の約半分に到達し、健康上の利益があると称する製品の広告にさらします。3つ目のグループは陰謀論者、4つ目のグループはフォロワーが比較的少ない、主にFacebookのコミュニティです。

 

ワクチン反対運動により、ソーシャルメディア企業は年間10億米ドルの収益を生み出す可能性があります。実際にFacebookとInstagramだけで9億8,900万ドルの収益を生み出しました。これは主に、ワクチン反対派のアカウントの3,800万人のフォロワーをターゲットにした広告による収益です。

 

※6 https://www.thelancet.com/journals/landig/article/PIIS2589-7500(20)30227-2/fulltext

 

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