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食生活が健康・環境に影響することは知られているが…
■「食生活の小さな変化で、健康や環境に大きな利益」。米国での研究結果
米ミシガン大学の研究者らによる2021年8月の「ネイチャー・フード(Nature Food)」の報告によると、ホットドッグを食べると36分間の健康寿命を失い、代わりにナッツを1食分30g食べると26分間の健康寿命が得られるとのこと(※1)。
論文の著者である同大学環境健康科学科オリビエ・ジョリエット博士とカテリーナ・スティリアヌ博士は、非営利メディア「ザ・カンバセーション(The Conversation)」に次のように述べます(※2)。
「米国では、高級レストランからファストフードのチェーン店まで、ベジタリアンやヴィーガンのメニューがありふれています。そして多くの人が、自分の食べ物の選択が、自らの健康や地球の環境に影響することを知っています。ただし、スーパーでミックスベジタブルを買ったり、スポーツバーでチキンウィングを注文するという個々の選択が、個人の健康や環境にどれだけ影響するのか、日常生活ではなかなか分かりません。私たちはこのギャップを埋めるために、研究を進めています。最終的に知りたかったのは、私たち一人ひとりの健康を増進し、環境への影響を減らすために、食生活を抜本的に変える必要があるのかということ、そして、人類の健康と地球のために意味のある変化をもたらすには、みんながヴィーガンになる必要があるのでしょうか? ということです」
これまで、個々の食品の健康や環境に与える影響を、直接比較する方法はありませんでした。そこで博士らは、さまざまな食品を選択した場合の健康への負担を初めて具体的に数字で示しました。すると食生活を少し見直すだけで、より長生きし、より環境に優しい生活につながることが明らかになったのです。
※1 https://www.nature.com/articles/s43016-021-00343-4?fbclid=IwAR2C6paRI772PhlHrIyKYlnBM2S9LLsHfFz86AuVkeNqTr-NC6zCEfPP79k
※2 https://theconversation.com/individual-dietary-choices-can-add-or-take-away-minutes-hours-and-years-of-life-166022
■各分野の専門家が集結し、研究チームを結成
この学際的な研究のために、食のサステイナビリティ(持続可能性)、環境衛生、栄養の専門家がチームを組みました。ジョリエット博士は、ライフスタイルメディアの「マインドボディグリーン(MBG)」に「このコラボレーションはユニークであり、時宜を得たものでした」と語ります(※3)。
数十年間にわたり環境ライフサイクル分析(食品のライフサイクルに与える累積的な影響の研究)に携わってきたジョリエット博士は、「栄養は常に見落としてきた要因の一つ」と指摘します。「ライフサイクルアセスメントでは、原材料の抽出、製造、サプライチェーン、そして使用や廃棄…ライフサイクルのすべての段階を見ます。通常、ライフサイクルアセスメントを行う人は、人間の健康への影響(これは大きな影響です)を考慮しません」「率直に言って、最初からそうしなかったのは愚かでした。食品の栄養価は、その食品が地球にとってどれだけ健康的であるかを左右するものだからです」と語ります。
一方、栄養士もこれまで同じように縦割りでやってきたので、より全体的なデータベース、つまり個々の食品が、健康と環境に与える影響を測定するデータベースを作ることは、どちらの専門家にとっても新鮮な挑戦だったそうです。
※3 https://www.mindbodygreen.com/articles/health-and-environmental-impact-of-individual-dishes-study