コロナ禍が引き起こした2つの「大惨事」
新型コロナウイルスの感染症は、テクノロジーやソーシャルメディアが、世界中に普及してから起こった歴史上初のパンデミックです。新型コロナウイルスが急速に世界中に広がり始めたとき、パンデミックとは別に、「インフォデミック(infodemic)」という大惨事が起こりました。
インフォデミックは、世界保健機構(WHO)が使い始めた用語で、「情報(information)」と「エピデミック(epidemic)」の組み合わせです。正確な情報と誤った情報の両方が、急速かつ広範囲に広がることを指します。
※「医師×お金」の総特集。【GGO For Doctor】はコチラ
科学誌『ネイチャー』にて、2020年6月にニック・フレミング氏は「病気の情報についての膨大な需要や、医療制度および生活への打撃、未知のウイルスへの疑問は、神話やフェイクニュース、陰謀説にうってつけの温床を作り上げた。馬鹿げていて大方は無害なものと退けられるが、その一方で生命を脅かす情報もある」(※1)と述べています。
そして今、まさに命を危険にさらすウソとして、ワクチンについての誤った情報が世界中に広がっています。
※1 https://www.nature.com/articles/d41586-020-01834-3
反ワクチン活動家による「ワクチン被害者」の捏造
カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院のドリット・ルビンスタイン・ライス教授は、ワクチンに関する法的問題についての研究と活動を推進しています。
ライス教授は、ハーバードロースクールの「健康の法案」で反ワクチン活動家を批判し、「(新型コロナウイルスの感染が拡大した)当初から、反ワクチン活動家はある思想に傾倒した。新型コロナウイルスのワクチンは機能せず、また危険であり、これらは悪意のある世界的な陰謀によって(接種を)推進されているという考えだ」(※2)と述べています。
また、教授は記事(※3)にて、反ワクチン活動家が無根拠に「仲間がワクチンにより死亡した」という主張を行った事例を挙げています。
最も極端なものは、ワクチン接種後に一瞬気を失い、その後すぐに復活した看護師のティファニー・ドーバーさんの例です(※3)。この一件に関して、反ワクチン活動家はドーバーさんが死亡したと主張し、彼女の個人的な写真を投稿し、偽の死亡記事を作り上げました。これらは今もFacebook上で広まっており、ドーバーさんと家族への攻撃が続いています。「ティファニー・ドーバーのための正義」を求めているFacebookのグループさえあります。
他にも「アラバマ州の看護師が、新型コロナウイルスのワクチンを接種し死亡した」と主張した例があります(※4)。Facebookに、あるチャットのスクリーンショットを投稿しました。そこには「なんてことでしょう、たったいま叔母の死亡が発見されました。叔母は看護師で、仕事でワクチン接種を受けた一人でした。…」という旨が表示されています。
しかしアラバマ州保健局が、ワクチンを投与した州のすべての病院に連絡したところ、ワクチン接種による死亡者はいないと確認されました。
※2 https://blog.petrieflom.law.harvard.edu/2021/01/20/covid-19-vaccine-misinformation-anti-vaccine-movement/
※3 https://www.skepticalraptor.com/skepticalraptorblog.php/tiffany-dover-nurse-harassed-after-fainting-following-COVID-19-vaccine/
※4 https://www.reuters.com/article/uk-factcheck-alabama-COVID-death/fact-check-alabama-nurse-did-not-die-after-receiving-the-COVID-19-vaccine-idUSKBN28S2FP