アメリカ、都市圏と農村地域にある「絶望的な医療格差」【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

米国地域保健協会(NRHA)は、「地方の医療従事者と患者が直面する障害は、都市部とは大きく異なる。経済的な要因、文化的・社会的な違い、教育不足、政治家の認識不足、遠隔地に住むという孤独、これらすべてが医療格差を生み、地方のアメリカ人が普通に健康な生活を送るための努力を妨げる」と指摘します。中には、医療が絶望的な状況に陥っている地域も…。ボストン在住の大西睦子医師が、米国の都市圏と農村地域とで拡大している「医療格差」について解説します。

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「国土のわずか2%」に「人口の8割以上」が住む米国

世界経済フォーラムは「米国は世界で3番目に大きな国だが、都市部は国土のわずか2%しか占めていない。米国人の圧倒的多数が都市に住んでいる。2018年現在、都市で生活する人は、米国人口の82%以上を占めている」「米国の都市部は小さいけれど強力。わずかなスペースでも、大きな効果を発揮することは明らかだ。2018年には、31の郡の経済が、国内総生産のなんと32%を占めているが推定されている。これらの郡のほとんどは、ロサンゼルスやニューヨークなどの主要都市とその周辺にある」と指摘します(※1)

 

つまり裏を返すと、「米国土の98%の農村地域に、18%の人口が住んでいる」ということ。ちなみに米国勢調査局によると、図表1の地図(米国勢調査局のサイト※2 から引用 )の緑色の部分が「農村地域」を表しています。農村地域に住む全人口の、ほぼ半数(46.7%)が南部地域に、64.4%はミシシッピ川以東に住んでいます。一方、西部地域の総人口のうち、農村部に住んでいるのはわずか10%です(図表2)。
 

緑色の部分が「農村地域」 出所:米国勢調査局(本稿※2を参照)
[図表1]米国① 緑色の部分が「農村地域」
出所:米国勢調査局(本稿※2を参照)

 

出所:米国勢調査局(本稿※2を参照)
[図表2]米国② 出所:米国勢調査局(本稿※2を参照)

 

※1 https://www.weforum.org/agenda/2020/02/land-use-america-agriculture-nature-urban

※2 https://mtgis-portal.geo.census.gov/arcgis/apps/MapSeries/index.html?appid=49cd4bc9c8eb444ab51218c1d5001ef6#:~:text=The%20Census%20Bureau%20defines%20rural,tied%20to%20the%20urban%20definition.

 

■今後も都市・郊外地域は成長、農村地域は衰退の一途

米メディア『USA today』は、2020年の米国勢調査の結果について「米大都市圏は、さらに人口が密集し、多様性に富み成長を続けているが、地方は伸び悩み、人口を維持することさえも苦戦している」と述べます(※3)
 

国勢調査によると、全体として大都市圏は9%成長しましたが、小規模地域はわずか1%の成長にとどまりました。全米の10大都市圏のすべてが成長し、最も成長した2つの地域、ダラスとヒューストン大都市圏はともにテキサス州にあります。上位5都市は、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストン、そしてフェニックスで、フィラデルフィアは初めてトップ5から脱落しました。

 

USA todayは「人種や民族の多様化、大都市圏への一極集中は政治的・経済的パワーに大きな影響を与える」「企業や高等教育機関は、戦略を立て、従業員、学生、ビジネスパートナー、顧客を採用するときに、国勢調査のデータを頻繁に引用する」「国勢調査は、メディケイド、貧困家庭一時扶助制度、子ども健康保険制度など社会福祉プログラムを通じて連邦支出の配分を決定する、場合によっては、十分な人口を持たない地域は、特定のプログラムや支出から締め出されることもある」「地方では、重要なサービスを提供することがより困難になるかもしれない。米国疾病対策センター(CDC)によると、地方では新型コロナの予防接種率が遅れている」と指摘します。

 

このような状況において、都市圏と農村地域での医療格差が広がっています。

 

※3 https://www.usatoday.com/story/news/politics/2021/08/12/takeaways-2020-census-rural-urban-population-divides/5493030001/

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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