没頭できる趣味があるとホーム生活は充実
自立の入居者は介護職員から放っておかれるケースが多々あります。「Aさんは何でも自分でできるから」とみなされて、放置されてしまいます。勘違いをしないでいただきたいのは、放置と言っても忘れられているわけではありません。もちろん無視されているわけでもありません。
そのような自立の入居者には、介護職員は「見守り」という介護支援を常に行っています。ただ「見守り」なので、具体的な行動として感じることができないだけです。自立の入居者は、いかに自分が老人ホームで介護職員から放置されているかを自慢してもいいと思います。放置されているということは、元気な証拠だからです。
快適な生活のための心得⑤
ひとりの時間こそ大切。趣味を持ってホーム入居しよう
老人ホームでは、食事や入浴以外の時間は、おおむね自由時間です。
そして介護職員の多くは、介護の必要な入居者に対して介護支援をする目的で置かれている関係から、介護支援が必要ではない入居者とはあまり接点が生まれません。元気な入居者は、平たく言うと放置されるということです。
もちろん、職員に用があるときは、ナースコールを押せば来てくれますが、職員もそうそう暇ではないので、用がなければナースコールを押すという行為もはばかられます。
そのような老人ホームで快適に生活をしていくためには、一人でできる確たる趣味を持って入居することをお勧めします。読書でも編み物でも書道でも何でもかまいません。とにかく、自分一人で没頭できる趣味があると、ホーム生活は飛躍的に充実していきます。さらに、作品や成果物が伴う趣味はホーム内や地域などで発表する機会もありますので、趣味のやりがいにも繋がっていくはずです。
快適な生活のための心得⑥
「ありがとう」と言うのではなく、言ってもらえるか
以前、世界で一番「ありがとう」を言われるホームを目指そうと言っていた老人ホームがありました。しかし、そのホームは残念ながら今は存在していません。消滅してしまいました。
その理由は何でしょうか? もちろん真相はわかりませんが、私は「ありがとう」にあると考えています。このホームの目指していた、「ありがとう」を入居者からたくさん言われるという方針は、平たく言えば、さまざまな支援をして入居者に感謝されることを指していると思います。
しかし、私は次のように考えます。入居者は「ありがとう」を言い続けていると疲れるのではないのか?と。
人にいろいろなことをやってもらうことが、それほどよいものなのか?と。
さまざまな支援をしてもらえることに、否定的になる必要はありません。しかし、感謝ばかりし続けていると、人は疲れてしまいます。もう、げんなりしてしまうのです。高齢者に本当に必要なことは、「ありがとう」という感謝の言葉を言うことではなく、相手から「ありがとう」と感謝されることなのではないでしょうか。であるとすれば、老人ホームの入居者は、同じ入居者やその家族、介護職員らから「ありがとう」とたくさん言われたほうがよいと思います。