大都市圏では入居者誘致合戦が繰り広げられている
入居者は介護サービスをやってもらって当たり前なのか
「自助」「互助」「共助」「公助」の視点から考えれば、入居者は入居後、全面的にホーム側に依存してはいけないということになります。このことが理解できていない入居者や家族が多すぎるような気がしてなりません。
もちろん、老人ホーム側の案内も不十分だと思っています。ホームの中には、いまだに、入居者確保のために、「何でもやります」的な謳い文句で入居者を集めているホームもあります。そもそも、「何でもやります」的なことを謳うホームは信用できません。私は、ホーム側が「自助」「互助」「共助」「公助」という介護サービスに対する基本的な考え方の中で、自分たちホームは、どのような役回りを担うのかを説明することが本来のあるべき姿だと考えています。
しかし、多くの老人ホームは、他のホームより、自分たちのホームが提供できるサービスの手厚さや種類の豊富さのアピールに終始しています。
私は、長年老人ホームという商売をしてきていますが、いまだかつて「お客様のようなタイプの入居者は当ホームには向いていません。お客様のような方は○ホームのほうがよいと思います」ときっぱりとホームの言い分を主張し、勇気を持って断るホームにはお目にかかったことがありません。
たいていは、身体の状態を鑑み、対応できるかどうかで判断し、対応できなければ断るパターンか、さもなければ、ライバルホームとの競争の中で何でもやりますと入居者誘致合戦を繰り広げているホームが多いと思います。
とくに、熾烈な生存競争にさらされている大都市圏の場合、出口の見えない入居者誘致合戦という消耗戦を戦っているホームばかりのような気がしてなりません。誤解が起きないように、この部分はもう少し詳しく書いておきたいと思います。
断るという親切と、自分たちの都合で断ることの違い
「あるホームに見学に行ったら『当ホームでは受けることはできません』と拒絶されました」という読者の方もいるのではないかと思います。このことは、「何でもできます。お任せください」という誘致合戦とは違うのでは?と思われるかもしれません。
しかし、私が言いたいのは、入居者のことを本当に考えた結果、自分のホームより他のホームのほうが適切であると判断した上で断るという勇気があるホームにはお目にかかったことはない、ということです。