深夜に絶叫「開けろ、開けろ!」警察沙汰の理由は…
「そう。もうすぐ1歳。俺は酒浸りだからそう長くは生きられないだろうけど、こいつが成長していくのが楽しみでしょうがない。会社のことは息子(次男)に任せてある。今や孫が俺の生きがいだ」レスラーさんはそう言い、少し寂しそうな顔をした。
寂しそうな顔をしたのには理由がある。長男との仲がよくなかったせいで、そう頻繁に会うことができなかったのだ。長男の妻も酒癖の悪いレスラーさんを嫌っていた。
この頃になると、レスラーさんは外で飲み歩くのをやめ、家で晩酌するのが日課になっていた。しかし、酒癖の悪さは治っていない。
飲みながら気分がよくなると「ちょっと孫の顔でも見てくるか」と立ち上がる。歩いて数分のところに住んでいる長男の家に出かけ、孫の顔を見ようとするのだ。「迷惑だからやめてください」とレスラーさんの妻が止めるが、レスラーさんは聞かない。夜だろうがお構いなしだ。長男家のチャイムを鳴らし、「おい、俺だ。顔を見に来たぞ」と喚く。
もちろん、長男一家としては大迷惑だ。1歳未満の子どもは寝かしつけや夜泣きが大変だ。母親は体力的にも精神的にも疲弊している。せっかく寝た子どもを起こすわけにはいかない。
「飲んでますか?」長男の妻がドア越しに聞く。「ああ、飲んでるよ。早く開けろ」レスラーさんが返す。「じゃあ、ダメです。また今度にしてください」そう言って、長男の妻はレスラーさんを追い返す。レスラーさんが飲んでいるときはいっさい家に入れなかった。
しかし、それではレスラーさんの気持ちが収まらない。近所の目を考えることなく、開けろ、開けろと騒ぐ。そんなやりとりを何度かしているうちに、長男の妻はパトカーを呼んだ。年を取り、環境が変わっても、飲んでパトカーを呼ばれるという点ではレスラーさんは変わらなかったのである。
人は年をとると丸くなると言う。しかし、レスラーさんにそんな傾向は見られなかった。むしろ頑固さや意地っ張りの性格が強くなっているように見えた。