子どもを持つ人の再婚は注意が必要だ。というのは、入籍することによって再婚相手に相続権が発生し、もともと相続権を持つ子どもとの間でトラブルになる可能性があるからだ。レスラーさん(仮名)の相続も、再婚がトラブルにつながったケースの1つだ。レスラーさんは、60歳で小料理屋の女将さんと再婚。当初、再婚相手であるおかみさんは相続権を放棄していたが、レスラーさんの死後、自分が持つ相続権を主張し、子どもたちともめることになった。※毎年恒例、幻冬舎ゴールドオンラインの相続特集が開幕! 最新情報から大人気記事のピックアップまで、盛りだくさんでお届けします。

次男の悲鳴「殴られながら、我慢してつくったんです」

「ええ。法律上、彼女にも相続の権利がありますので」私はそう答え、彼女の法定相続分が2500万円であることと、再婚相手の遺留分について説明した。

 

遺留分とは、相続の権利を持つ法定相続人が受け取れる最低限の財産のことだ。相続の割合は法定相続分が目安となるが、一方で、亡くなった人の意思で自由に相続人や相続の割合を決めていいことにもなっている。

 

そのため、亡くなった人が「財産をすべて寄付する」「愛人に全財産あげる」といった遺言を書いていると、配偶者や子どもが相続できなくなってしまう可能性もある。それを防ぐためにあるのが遺留分だ。つまり、相続する人が最低限受け取れる割合を定めることで、相続人の権利を守っているわけである。

 

「なんとかなりませんか」「なんとか、とは?」「父の財産は、父1人がつくったものではありません。父には商才があったと思いますが、支えていたのは母親です。母親が日々殴られながら、我慢してつくった資産でもあるんです」「そうですね」

 

私は次男の気持ちがよくわかった。レスラーさんの妻は、結婚してからずっと我慢してきた。30年以上にわたる苦労を経て、5000万円という資産ができた。その資産の半分を、わずか数年だけ一緒に暮らした他人が相続する。これは次男にとって堪えがたい現実だった。「あとは話し合いです」私はそう伝えた。

 

法定相続分はあくまで目安であるため、その通りに分けなければいけないというわけではない。遺留分も相続人の権利を守るためのものであり、必ずしも権利を行使する必要はない。そのような点から見て、あとは相続人の間で話し合って決めるしかない。

 

「心情的には納得しがたいと思う。しかし、再婚相手がここ数年のレスラーさんの生活を支えたのも事実だ。最後は寝たきりのレスラーさんを介護していたし、レスラーさんの心の支えにもなっていた。そのことも加味して、話し合って決めることにしよう」「そうですね。わかりました」次男はそう言い、電話を切った。

炎上する相続

炎上する相続

髙野 眞弓

幻冬舎メディアコンサルティング

裁判沙汰になったトラブルの3割が遺産総額1000万円以下⁉︎ 「ウチは大丈夫」と思ったら大間違い! 6つの炎上エピソードから学ぶ「円満相続」の秘訣 相続でもめたあげく、兄弟姉妹が憎しみ合い、絶縁状態になってしまうこ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧