「ノーガード状態」の家族の恐ろしい末路
どんなトラブルでも事前に十分な対策をとってさえいれば、防ぐことは決して不可能ではありません。
「争族」についても、有効な予防策がいくつか存在します。とはいえ、相続対策は、事柄の性質上、相続を受ける立場の者が主導的に行ったり、あるいは被相続人となる者にあからさまに促すことは難しいものです。
たとえば、高齢の親に向かって、「親父も年だから、そろそろお迎えがきたあとのことも考えてくれないと」などとは(たとえ思っていても)実際には、言いにくいはずです。
したがって、争族防止に向けた取り組みは、被相続人となる者から自発的に始めることが求められると言えるのですが、そもそも、相続争いという事態が起こりうることへの認識を欠いている人も少なくありません。
たとえば、「相続争い? わが家には、資産らしい資産などないのだから無関係な話だ」と思い込んでいるようなタイプの人は、相続対策の必要性など、はなから感じていないはずです。
しかし、このような無警戒な状態で相続を迎えることは非常に危険です。たとえ、わずかな額であっても、財産がある以上は、高い可能性で相続争いが起こると思っていたほうがよいでしょう。
相続人の置かれている立場は様々です。中には、100万円、いや数十万円の金銭であっても、もらえるのであればもらいたいという人がいるかもしれません。そのような者が相続人の中に一人だけではなく、複数人いれば、少しでも自分の取り分を増やそうと互いに譲らず、なけなしの相続財産を巡って、執着心をあらわに争う事態にならないとは限りません。
あるいは、「資産がこれだけしかないのはおかしい。本当はもっとあったのに他の相続人にこっそり渡したのではないか」と邪推する者も現れるかもしれません。
そのような疑念が発火点となって、「親父からもらっているだろう。隠してもわかるんだぞ!」「もらってなどいない!」などといういざこざが相続人の間に生まれることもあるでしょう。
逆に、資産持ちの家であれば、被相続人となる者が、死後の「争族」をおそれて、十分な相続対策を行うことが多いかもしれません。その結果、相続を巡る争いを防ぐこともできる、あるいは発生したとしても、ドロ沼化することは免れることができるかもしれません。
しかし、資産の少ない家では、相続人たちが無防備のままに、いわば「ノーガード状態」で、争いの火種にさらされることになるのです。