何歳になっても恋愛は自由。でも相続の観点では…
レスラーさん一家の相続は非常に危ういものだった。再婚相手の意思によっては、財産の半分が再婚相手の手に渡っていた可能性があった。
なぜこのようなトラブルになったかというと、ことの発端はレスラーさんの入籍である。相続の権利は配偶者と子どもに発生する。つまり、入籍せず、法律上の家族にならなければ、そもそもこの問題は起きなかったのだ。
レスラーさんが子どもたちの忠告を聞かず、入籍した理由はわからない。晩年の恋に燃えたのかもしれないし、病気になり、体と気力が弱くなっていく中で、結婚という確固たるカタチをほしがったのかもしれない。
恋愛に年齢は関係ない。一緒に暮らし、お互いを支えることにもメリットはある。高齢者の再婚も、大半はそういう背景があるのだろうと思う。
しかし、相続という点からみると、入籍するかどうかはよく考えなければならない。子どもが相続するはずだった財産の比率と金額が変わり、それがもめごとにつながる可能性があるからだ。
子どもの立場からすると、父親が後妻を迎えることを快く思わない場合もある。最近は年の差婚という言葉を耳にするし、芸能人が自分の娘くらいの年齢の女性と再婚したというニュースも聞く。そういう複雑な心情の時に、相続の話が加わることで、親子関係が壊れたりすることがよくあるのだ。
私が過去に扱った例を振り返ると、父親の再婚では、娘とトラブルになるパターンのほうが多い。父親に幸せになってほしいという気持ちがある一方で、再婚相手に対して同性ならではの複雑な感情を持つのかもしれない。一方、息子の場合はあっさりしていることが多い。
レスラーさん一家の場合も、新たに誰かを好きになるという点については、長男、次男の興味は薄かった。親父の好きにすればいい。そう考える人は男のほうが多いように感じる。私も同様の立場で、父親が再婚するとしたら、そう考えるだろう。ただし、それでも相続についてはしっかり話し合っておく必要がある。
入籍するつもりがあるのかどうか、入籍する場合は再婚相手の相続をどうするか。そのようなことをあらかじめ決めておくことが、再婚と相続をめぐるトラブルを防ぐ最善の方法なのだ。遺産についても話し合っておく。子どもに譲りたい土地などがあるなら遺言書を書く。
レスラーさん一家の場合も、まさか再婚するとは思っていなかったが、その可能性も考えておけば、次男に会社を譲る時に土地の贈与処分も遺言書に明記すべきだった。
再婚するのは自由だが、それは相続の準備が整ってからだ。その順番を心得ておけば、無用なトラブルを避けられるのだ。