不動産による資産形成は投資ではなく事業
「最初の物件は現金で購入」を勧める理由
本連載では一貫して、不動産による資産形成について、「投資」ではなく「事業」だと伝えてきた。だが、大半の人が「年金代わり」、あるいは不動産会社の営業マンの典型的なセールストーク「所得税の減税になる」という位置付けで始めるため、勘違いしてしまうのだ。
その典型が区分マンション投資だろう。区分マンション投資は、1000万円前後から2000万円程度で購入できるものが多く融資も受けやすい。
自己資金ゼロで始めると、入居者がいる状況でも家賃だけでは返済がまかなえず、自身の預金からの補填が必要なケースが目立つ。物件にもよるが、その額は月々5000~1万円程度、その補填額こそ「年金の保険料みたいなものだと思ってください」と営業マンから説明を受け、ローン完済後には家賃収入はすべて自分のものになり、月々の5000〜1万円程度で35年後には1000万円以上の不動産が手に入ると思ってしまうわけだ。
しかし、冷静に考えてみてほしい。まず、入居者がいる場合でも自己資金を継続してつぎ込まなくてはいけないのに、空室期間中はどうなるのか。都内で家賃が7万~8万円台の物件を買ったとすると、その家賃をさらに自己負担しなくてはいけない。しかも、区分マンション販売会社が提示する表面利回りは、たいてい家賃の減額が加味されていないので、ローンが35年で組めたとしても、その間どれだけ家賃は下がるのだろうか。基本的に不動産は築年数が古くなると家賃は下がるが、月々の返済額は減ることはない。それどころか、減価償却費が減り、元金の割合が増えれば、税額は増えるのだ。
表面利回りには原状回復費用も含まれていない。入居者による破損や故障以外の原状回復費用は家主の負担となる。原状回復費用は、通常家賃の1~3カ月分程度かかる。
もちろん、サブリースを条件とした物件も少なくない。サブリースなら、空室の心配がなく家賃が安定的に入ってくるので安心だと思うかもしれないが、実際はそうではないことも本書では書いてきた。サブリースであっても、基本的に原状回復費用は家主が負担するし、経年による家賃の値下げは免れない。サブリース契約自体を解約される可能性も十分ある。