借金が少なければ破綻リスクは軽減される
借金は最強の味方にもなり、最強の敵にもなる
区分マンション投資の問題は、アパート、一棟マンション同様、自己資金ゼロで始めることにあるのだ。特に融資環境が厳しいときは、アパートや一棟マンションの場合、自己資金ゼロで購入することは難しいため、ある意味歯止めが利く。
しかし、区分マンション投資は融資が厳しい時代でも、サラリーマンとしての年収が安定していれば、審査は通りやすい。最近では、自己資金なしで45年ローンの商品なども出てきた。39歳までは45年でローンが組めて団体信用生命保険付きだ。ローン期間が長ければ、月々の返済額が減るため、より返済しやすいということなのだろうが、45年後の完済時には当人は84歳となる。区分マンション投資の目的は、自身の年金代わりというより、もはや相続対策かといった状況となる。
区分マンションを自己資金なしで購入しても、ローン完済まで持ち続けることができず、最後は損切り覚悟で売却する人は少なくない。某区分マンション投資販売会社大手では、管理戸数がほとんど増えないと聞いたことがある。その理由は、オーナーが売却するからだという。もちろん、よほど安い物件だったり、立地が良く、不動産相場の上下する波の上のところで売却するのであれば、マイナスにならない可能性もあるが、そんなケースはほんの一握りだろう。大体不動産の景気の波は15年周期といわれているが、この15年間持ち続けられるかといえば、そう簡単なことではないだろう。
私の身近な人にも、最近中古区分マンションを購入した人がいる。もともと投資に関心がある人で、株式投資もしている人だ。諸費用のみ自己資金で、購入費用はフルローン、投資対象は、都心の一等立地に立つ築30年超えのマンションだ。「都心の好立地であれば資産価値は下がらない」という触れ込みで購入を決意したという。
購入費用は2000万円ほどで、融資は信販系金融機関から金利2%ほどで受けた。その人の話ぶりから、自己資金をつぎ込んでいないため、2000万円の借り入れをしている感覚が薄いと感じた。もちろん、その人に限らず、近年、自己資金ゼロで不動産を購入し、窮地に立たされたという人たちに何人か会ったが、借金額の重みをあまり感じていないように見えた。自己資金ゼロ投資には、こうした借金の不安を消す「マジック」がある。
「かぼちゃの馬車」オーナー50人ほどの相談を受けたというファイナンシャルプランナーは、相談者の8割がすでに賃貸用不動産を所有、その6割ほどは自宅とは別に区分マンションを所有している人だったという。「相談者にはすでに賃貸不動産を所有しているのに、不動産のことを何も知らない人が多かった」と、そのファイナンシャルプランナーは話してくれた。
区分マンションだけでなく、もっと投資金額が大きいアパートやマンション一棟を購入するときは、なおさらその点を意識しないといけない。融資が引き締まって嘆く声を多く聞くが、本来買ってはいけない人、つまり不動産を買った後、明らかに苦労することがわかる人に融資をしないという点においては、ある意味セーフティーネットになって、良い状況ではないだろうか。
経営にはリスクが付きもの。借金が少なければ少ないほど、破綻リスクは軽減される。リスクを軽減する知識や経営者としての意識、さらにはリスクに打ち勝つ覚悟を持たずにチャレンジをすると、痛い目に遭う確率は高くなることを知っておくべきだろう。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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