アパート経営にもビジネスパートナーとの連携が不可欠
賃貸経営にも「組織の力」が必要な時代になった
家主業は、資産運用の有効な一手法であることは間違いないが、決して楽に儲かるというものではない。不動産の売買によるキャピタルゲインを狙う投資ではなく、取得した不動産を、人々に生活の基盤となる住まいとして提供し、入居者の獲得、賃貸管理、法改正への対応、財務管理など、経営戦略を立て遂行し利益を上げる事業だ。
現在、家主業を取り巻く環境は大きく変化し、到底一人の力だけでは太刀打ちできなくなりつつある。そんな中で、安定した家賃収入を得るためには組織の力、すなわち体制づくりが重要になってきた。その体制をつくるためには、ビジネスパートナーである不動産会社やリフォーム会社との連携が必要だ。
家主業自体は、建物を取得し、入居者に貸し、対価として家賃を得るというシンプルな事業だが、家主業を取り巻く賃貸業界は意外に複雑だ。賃貸業界に商品やサービスを提供するために新規で営業をしようとする企業に話を聞くと、営業のやり方は意外と難しいという話を聞く。何がどう複雑なのか、賃貸業界の構造について紹介しよう。
賃貸業は主に3者が関わる。アパート・マンションを所有する家主、入居者募集や賃貸管理を行う不動産会社、そしてそのアパート・マンションを借りて住む入居者だ。3者がそれぞれどのように関係するのかを、第1段階「募集~契約」、第2段階「入居」、第3段階「解約・退去」の3段階に分けて紹介する。
第1段階
募集~契約
入居者の募集は不動産会社が行う。現在、募集方法の主となるインターネットの媒体に物件情報を掲載するのも不動産会社だ。
家主は、不動産会社に物件情報を提供、不動産会社は、部屋の写真を撮影して物件情報を不動産情報ポータルサイト(例えば、「ライフルホームズ」や「SUUMO」など)や自社サイトにアップする。
物件情報を見た入居希望者から問い合わせがあると対応し、「内見」と呼ばれる物件見学に同行する。内見後、入居希望者が気に入れば「申し込み」を受け付け、審査。審査後、不動産会社で「賃貸借契約」を締結する。賃貸借契約の際に「重要事項説明書」を読み上げて内容を確認するのは「宅地建物取引士」と呼ばれる有資格者で、契約を締結後、鍵を渡して入居となる。
なお、募集する際に不動産情報ポータルサイトに掲載する物件情報、すなわち広告の掲載費用はすべて不動産会社が負担する。家主には契約が成立するまでの募集コストは基本的にかからない。