もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

厄介払いだと老人ホームの入居自体が不幸になる

老人ホームの選び方ではなく、探し方の手順とは

 

まず、老人ホームを選ぶ前に、なぜ老人ホームに入居するのか、しなければならないのか?を明確に整理しておくことが重要です。

 

大きく分けると、自分自身が老人ホームに入居するケースと、家族が自分の親のために老人ホームへの入居を検討するケースとがあると思います。自分自身が老人ホームに入居を希望している場合は当然、自分が持っている動機を整理しておけばよいことになります。

 

なぜ老人ホームに入居するのか、しなければならないのか?を明確に整理しておくことが重要です。(※写真はイメージです/PIXTA)
なぜ老人ホームに入居するのか、しなければならないのか?を明確に整理しておくことが重要です。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、親の入居の場合は多少勝手が違ってきます。親のことで老人ホームへの入居を検討する場合は、その理由が自分たちだけの都合になっていないかどうかを確認してほしいと思います。

 

一人暮らしをしている父親に対し、もうこれ以上在宅で一人にしておくことは心配だという理由で老人ホームへ入居を検討するケースは多くあります。しかし、その理由は本当に父親のことを考えた結果なのでしょうか? 自分たちの都合──深夜、近所や警察からクレームの電話があったからとか、何度も何度も同じことをしつこく電話で聞いてこられるのが面倒だからとかという理由で老人ホームへの入居を検討してしまいがちです。

 

当然、この動機が悪いというわけではありません。むしろ、私は老人ホームをもっと積極的に活用するべきであるという立場です。しかし、入居する当の本人が納得できなければ、結果として入居自体が不幸なものになってしまいます。

 

つまり、この場合は関係者の誰にとってもよいことはないということになります。親の老人ホームへの入居を検討している、または検討しなければならない立場にいる家族の場合は、日ごろから老人ホームの話を親子で話し合ったり、一緒に見学に行ったりという家族関係の構築が大切です。

 

私の経験で言わせていただけるならば、平素から親子関係が円満な家族と、そうでない家族とでは、老人ホームに入居した後の行動に明らかな違いが表れます。

 

多くの方は、子供との関係が、いま一つうまくいっていないから老人ホームに入居するのではないか?とか、子供たちの支援を受けることができないから老人ホームに入居するのでしょ?と考えているのではないかと思いますが、実は、そのような状況で老人ホームに入ってくる入居者は、あまり楽しいホーム生活を送ることはできません。

 

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