集中から分散、郊外衛星都市が復活する
まずは不動産価格が安いということです。平成バブル期にはこうした衛星都市の不動産価格も高騰しました。横浜のだいぶ奥のほう、たとえば栄区や金沢区、泉区といった住宅地でも1億円を超える物件がごく普通に出回っていましたが、現在は中古物件であれば1000万円台でも手に入ります。都市機能の多くは横浜に揃っていますので、平常時は横浜に遊びに行く生活を堪能できます。同じ神奈川なら相模原や横須賀、藤沢や小田原といった衛星都市を基点に生活構築することが可能となります。
また千葉なら、船橋や柏、松戸、埼玉なら大宮や浦和、春日部や川越を中心とした生活が送れます。これまでは横浜や船橋から、電車を乗り換えて東京にアクセスしなければならなかったのですが、ポスト・コロナでは最寄りの生活圏にこういった衛星都市があれば、毎日の生活にはあまり事欠かないということになります。
そうした意味ではポスト・コロナにおいては、これら衛星都市がどこまで人々を惹きつけるようなレイヤーを構築できるかが鍵となりそうです。それはただ単に劇場だとか展示場、体育館や図書館といったハコモノがあるだけに限らず、市民サービスや生活支援、災害対応、子育て、教育などあらゆる分野での居心地の良さの構築が問われてくる、と言えるでしょう。
そして差別化のヒントは、トヨタ自動車が裾野市で計画しているような、たとえば「道」といった、あるテーマをもとに徹底して街中にレイヤーを構築することなのです。こうした取り組みを成し遂げることで、衛星都市の中には今まで以上に魅力を増し、平成初期の頃以上に価値を高め、復権を果たすところが出てくるのではないかと期待しています。
さらにテレワークの領域を離れ、リモートワーク、つまり基本的には都心に行くことはなく、仕事は限りなくリモートワークですませることができるようになると、これまでの家選びとはおそらくまったく異なる街を選ぶ人が出てくると思われます。地方都市への人の逆流です。
地方都市の魅力はさまざまです。物価が安い、ということに加えて、不動産価格も大都市圏に比べれば格段に安いといえます。自然が豊かというのも場所によりますが、おおむねそうでしょう。人情がある、これも地域柄がありますので何とも言えませんが、少なくとも都会のような希薄な人間関係ではないでしょう。これまではこうした魅力的な要素は、人によって感じ方は違う、あるいは合う、合わないの違いこそあれ、地方都市の魅力でした。
ただこれまでは移住、定住を考える場合、なかなか地元に満足できるような仕事がない、というのがネックでした。必然としてまだ本格的にやってみたこともない農業に徒手空拳で挑戦する、2、3年で失敗、挫折。周囲との人間関係もうまくいかなくなって失意のもと、都会に帰る、というパターンが多かったようです。