コワーキング施設の戦略転換
都心のオフィスで働くことが少なくなり、基本の働き方が在宅でのテレワーク、もしくはコワーキング施設ということになると、これまでのコワーキング施設の立地にも大きな変化が出てきます。
なぜなら、これまでWeWorkなどのコワーキング施設の多くが都心部に立地してきたからです。彼らが都心部に立地するには理由がありました。彼らの会員の多くは、イメージされるようなスタートアップ企業というよりも、大企業や地方企業だからです。大企業は営業職などの社員に対して、取引先からいちいち会社に戻ってレポートなどの作成をすることを求めず、最寄りのコワーキング施設に立ち寄って作成する、あるいは取引先との会議を行なうスペースとして利用してきました。また地方企業では、東京や大阪などに出張したときのアイドルタイムでの立ち寄りスペースとして利用してきました。
コワーキング施設の機能とは、いわゆるシェアオフィスです。通常のオフィスであれば、同じ会社の社員だけが一緒に働く形態になりますが、コワーキング施設では、施設内のデスクやチェアが自由に使え、フリードリンクなどのサービスも提供されます。会費は運営会社によって異なりますが、安いプランであれば、月額8万円程度のいわゆるサブスクリプション(定額制)で会員に登録されれば、全国の施設が利用可能です。
個室スペースを使いたいときは、別料金になりますが、集中して仕事をしたいときに利用することができます。また会員間でのビジネスマッチングなども行なわれているのが特徴です。同じ会社の社員同士では、なかなか新しいアイデアが浮かびづらいものです。同じ就業スペースに異なる業種の社員たちが集えば、異業種交流にもなり、会員企業や社員にとっても利用価値は高いものとなります。
コワーキング施設は現在、新規テナントとして、都心部のオフィスビルの床を大量に借り上げています。最近竣工するオフィスビルの数フロアを借り上げたなどの事例も相次いでいます。オフィスビル関係者の中には、オフィスビルの大量供給が予想される東京都心部でも、今後もコワーキング施設が新しいテナントとしてたくさんの床を借り上げるはずだからオフィスマーケットは当面堅調である、とのコメントすら出るほど、テナントとして期待されてもいます。
ところがポスト・コロナの時代を見据えると、今後の変化にも目を向けなければなりません。つまり大企業の社員が都心に通勤してこない、地方企業も東京や大阪などへの出張が減少すると、コワーキング施設の在り方にも見直しが必要になってきます。もちろんこの機能自体が都心ですべて失われるわけではありませんので一定数は確保されるでしょうが、ポスト・コロナでは必然、施設の側から顧客に近づく立地戦略が求められることとなります。