入居需要があるのに空室物件は再生可能
不動産が安い理由は、買いたいと思う人があまりいない、つまり人気がないということだ。そこで、まず不動産で人気がない物件の特徴を挙げてみよう。
(1)建物が古い
(2)立地が悪い
(3)空室だらけで家賃収入が少ない
(4)借地権が付いている
(5)土地に接道がなく建て替えができない
(6)事故物件である
(7)特殊な物件である
(8)売主に事情がある
主に以上の8つの理由がある。この8つの理由をさらに分析して、高利回りで運用できる可能性があるか、可能性があるとしたら何がポイントになるかを探ってみよう。
(2)立地が悪い——未開拓の潜在的な需要を掘り起こす
立地が悪いと聞くと、多くの人は、「交通の便が悪いエリアに住みたい人は少ないのではないか」とか、「人口が少ない地方都市は大都市圏と比べるとリスクが高い」とか、「郊外は人気薄だろう」などと考えがちだ。しかし、立地の良し悪しの判断は、自分自身の限られた経験や一般的な常識だけで行うと、うまくいかない。
大都市圏では、駅からの距離が賃貸経営に大きく影響する。電車移動が主の都市部の賃貸住宅では、駅から徒歩10分を超えると入居希望者に敬遠されやすい。単身者向けの物件であればなおさらだろう。そのため、収益不動産の価格は駅から遠いと安くなる。入居者募集も容易ではない地域が大半だろう。しかし、例外もある。その例外を見つけられるかどうかが、実は一般的に立地が悪いといわれる物件で、高利回りでの経営を可能にするポイントだ。
駅から徒歩20分かかるような立地の物件であっても、「再生できる」と見込んだら購入し、10年で200戸ほど所有しているのは、東京都と福岡県を主な拠点とする天野真吾さんだ。
天野さんが中古物件を購入するときに重視しているのは、入居需要はあるのに運営方法に問題があるため空室率が高い物件かどうかだ。そもそも入居需要がない物件を再生させるのはハードルが高く、運営方法に問題がない物件は収益率の改善の余地があまりないからだ。「一般的に優良物件は駅から近い立地というケースが多いが、より重要なのは需給バランス。駅から近くなくても満室にできる物件はある」と話す。こうした考えの背景には、天野さんの前職時代の経験がある。前職のIT企業では、長年ITを使った事業再生提案を行ってきたが、事業再生のポイントは運営方法の改善というケースが多かったという。
例えば、某アミューズメント施設を担当していたとき、ハンディキャップがある人も健常者と同じように楽しんでもらいたいと、優先チケット発券システムを導入したところ、障がいのある人たちからはもちろん、健常者からもいい経験ができたと評判が良く、顧客満足度も運営会社の収益性も同時に高めることに成功。賃貸住宅についても、運営方法に問題があっても、それを解消できれば、たいがいうまくいくと、天野さんは話す。