「会社ファースト」から「生活ファースト」の家選び
ポスト・コロナでは、「会社ファースト」から「生活ファースト」の家選びが行なわれるようになります。また、能力の高い人ほど一つの会社だけで働くのではなく、個人事業主のような存在となって複数の会社と契約して働くようになります。今までは自分が寝る、休息するためだけの存在であった街で一日中過ごすようになることで、街の様子をよく観察するようになります。
こういった働き方をする人が増えてくれば、その人は他人に対して自分をどのように紹介するようになるでしょうか。一つには駅ピアノでも例に出したように、自分の職能で表現をするようになるでしょう。システムエンジニアです、人事コンサルタントです、事業アナリストです、といった具合です。
また一日の大半を過ごす街の名を挙げて自己紹介をする人も出てくるでしょう。立川在住のAAです。船橋のBBです、といった紹介の仕方です。米国人などは広い国であるせいか自分の出身の州を自己紹介ではよく使います。
井上章一さんの『京都ぎらい』(朝日新書)でも語られるように、京都生まれであることや京都在住者という表現には独特の誇りがあるようです。ところが「先の戦争が太平洋戦争ではなく、応仁の乱」と言われるように、京都には長い歴史に基づいた独特の感情が存在します。洛中に住んでいないとそもそも京都人とは認定されず、しかも室町時代くらいから住んでいなければ、本物の京都人とは呼ばれないそうです。このことは裏返せば、それだけ京都に対する人々の愛着が強い証拠とも言えるでしょう。
ポスト・コロナの時代では街に対する拘りが強まりそうです。埼玉県の浦和在住の人が大宮とは違うと胸を張る、鎌倉在住の人が鎌倉を湘南とは呼ばないで、と言うように、それぞれに拘りを持って街を語り始めることでしょう。今後は街の名が肩書になる世の中が出現してきそうです。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役
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