(※写真はイメージです/PIXTA)

「人生100年時代」と呼ばれる現代、老後の資金計画は多くの人にとって大きな関心事。しかし、必要な金額はライフスタイルや目的によって大きく異なります。本連載では、老後に必要な資金を目的別に分かりやすく解説し、不安の解消と実現可能な未来設計のヒントを提供します。第4回目は、旅行などの老後の「趣味」についてです。

趣味にかける費用の目安は3~5万円

趣味を持つ人の老後費用は、どのぐらい必要なのでしょうか。もちろん、趣味によって異なりますが、基本的には連載の第1回でお話したように、老後は活動する時間が多くあり、趣味にかける費用や時間が大きくなるので、通常の生活費プラス5万円、場合によっては10万円程度を備えておく、ということが考え方のベースになると思います。

 

老後の趣味で多いのは、習い事を始められるケースです。習い事を始めた場合、月に3万円から5万円程度の費用がかかることが一般的なので、そこがひとつの目安になると思います。また、旅行が趣味という方も多いですが、この場合の費用感は行く場所と期間に拠る部分が大きいので、一概には言えません。例えば半年に1回は海外旅行に行きたいのか、それとも国内旅行を年に4回程度したいのかというように、行く場所と頻度、期間によって費用は大きく異なります。予算はそうしたことを踏まえて事前にある程度決めておき、貯蓄の一部に組み込んでおくことをお勧めします。

 

では国内旅行の予算はどのように考えればいいかというと、基本的にはインフレ率を参考に考えるのが良いでしょう。国が目標としているインフレ率は年2%で、もちろん1%の年もあれば3%の年もありますが、基本は年2%程度の上昇なので、そこからどのぐらいのコスト感になるかを考えて、予算を組んでいただくイメージです。一方、海外旅行の場合はそもそも為替レートの変動があるので、まず1回の旅行に使う予算を決めておくのが良いのではないかと思います。

 

また、旅行のスタイルによっても費用は異なります。特に高齢者になると、やはり治安の良くない場所に滞在することは避けるべきですし、個人旅行のようなスタイルもリスクが高いので、どうしてもコストは上がる傾向にあります。高齢になると、添乗員など誰かがそばについていないと怖い、という部分もあると思いますので、基本的にはパッケージツアーなどを利用されるケースが多くなり、その分費用もかかることが予想されます。

 

手取りの3割は使わず確保する

連載の2回目で趣味の部分は「聖域」なのであまり介入しない、とお話ししましたが、基本的には手取りから生活費や趣味に使う費用などの支出を引き、最低3割は残るようにしておきましょう、ということはお勧めしています。

 

分かりやすい例を挙げると、毎月30万円の手取り収入がある場合、20万円は生活費や推し活などの趣味に使って問題ありませんが、それを引いた残りの10万円は「使わないお金」として確保しておきましょう、というイメージですね。

 

中には「いや、私はお金を使いたいので10万円も残したくありません」と考える方もいるかもしれませんが、自分に何かあった時のための備えは必要です。例えば、突然引っ越しする必要に迫られたり、転勤することになったり、というケースは十分あり得ることなので、そうした突然の事態や病気などに備えるためにも、しっかり手元に収入の一部は残しておき、一部は投資に回す、という形が望ましいと思います。

 

5割は投資に回す

その3割の内訳についてですが、3割程度は現金でそのまま貯めておき、残り7割を投資に回していただく形をお勧めします。もちろん年齢に応じて変える必要はありますが、基本的には「5割程度」は投資に回していただくようなイメージです。「円」で現金をたくさん持っていてもあまり意味がないので、やはり現金よりはNISAなどの投資に回していただく比率を大きくするのが理想的かなと思います。

 

ただ、例えば何かイレギュラーが発生して突然資金が必要になった場合、投資していた資金を引き上げることはリスクにもなります。ですから、毎月決まったお金は普通預金の口座に積極的に貯めておくとか、または積み立て貯蓄のようなことをしていただくなどして、ある程度「円」の資金も作っておくことは有事の備えとして必要でしょう。ですが、それ以外の部分に関しては、基本的には投資に回して資産形成をしていただく、という形を選択するのが良いのではないかと考えています。

 

人によっては、食費や生活費などを極端に減らして作ったお金を趣味に充てる、という方もいらっしゃいますし、そのあたりのバランスのとり方については、我々から特段介入することはありません。それよりも、そうした支出以外に投資や貯蓄に回せる3割程度のお金を残しておく、ということが重要なポイントだと思います。