高利回り築古アパートを手放した「リフォーム貧乏」
家主たちはよく、賃貸経営をもぐらたたきに例える。アパートやマンションの空室を埋めてせっかく満室にしても、また退去の知らせが入ってくるというわけだ。
以前、家主のこんな話を聞いたことがある。
甲信越地方に住む河野さん(仮名)は、数年前、地元で築約30年のRC造マンションを購入した。購入価格は4000万円弱で、満室時の年間家賃収入が800万円以上と20%を超える高利回り物件だった。ところが、3年後にはその高利回り物件を手放すことになってしまった。取得時、かなり建物が傷んでいたことからオーバーローンで4800万円を借り、物件取得費の残りをリフォーム費に充てることにした。実は取得時は全18戸中半分が空室だったが、リフォームをしたところすぐに満室になり、所有していた3年間の平均入居率は90%を超えていたという。それにもかかわらず、なぜ手放さなくてはいけない事態になったのか。
月間家賃収入は平均して75万円で、そのうち借り入れ返済額は40万円。手元に毎月35万円残るはずだったが、実際はマイナスになる月もあったという。古い建物だけに、取得時は空室でなかった部屋に退去が発生すると、その都度リフォームをしなくてはいけなかった。その額1戸当たり最低20万円程度。空室が発生してリフォーム業者に連絡すると、「今の時代、おしゃれな内装でないと決まりませんよ」と言われ、その金額は予算を上回ることもしばしばあった、と河野さんは話す。
その上、固定資産税が年間80万円、保証協会への支払いが年間100万円、そして、不動産所得が増えた分、国民健康保険の保険料も値上がりした。想定していなかったさまざまな費用の負担が大きくなり、持ちこたえられなくなった。マンションを売りに出したところ、運よく4400万円で売れ、借り入れは全額返済することができたという。
河野さんの例のように、「利回り」の高さだけに注目すると、実際購入できて家主になったはいいが、思いのほか支出がかさみ、持ちこたえられないケースもある。経営するに当たっては、収入だけでなく、どのくらいの支出が発生するかを十分に検討する必要がある。
利回りは、あくまでも不動産の収益性の一つの目安に過ぎない。自己資金をどのくらい準備できるのか、収入だけではなく、支出の金額や内容を試算し、キャッシュフローを十分考慮して買うことが必要だ。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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