新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

会社ファーストから生活ファーストの家選び

以前は、都心まで1時間から1時間半でも通勤圏と言われました。郊外になれば自然環境も良く、子育てにも好都合と言われました。そんな生活が成り立ったのは、旦那一人が働き、奥様は専業主婦であったからです。旦那が毎朝毎夕の通勤地獄に耐え、奥様は子供を塾に通わせ、送り迎えをするというライフスタイルでした。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

現代では夫婦共働きが家族の基本形となりました。夫婦の通勤や子供の保育を前提として都心居住が進み、都市部の人口は急増しました。しかし通勤がなくなるポスト・コロナの社会では、家選びはどう変わるのでしょうか。

 

海が好きな夫婦は、今までは通勤するには対象となりにくかったエリアを積極的に選ぶようになるでしょう。首都圏で言えば、神奈川県の横須賀や三浦、千葉県の大網や茂原あるいは館山といったところにも足を延ばし始めるかもしれません。

 

山好きな夫婦は、埼玉県の所沢から先の飯能や秩父、山梨県の大月、神奈川県の相模湖方面を選ぶようになるかもしれません。千葉県にいすみ市という場所があります。この地はすでに都会を離れて移住してくる人が多いのですが、多くの人が都心でも仕事を持ちながら、家では畑を耕す生活を送っています。

 

会社ファーストの家選びから生活ファーストの家選びになれば、家選びの選択肢は多様になり、「住みたい」場所は、人々の生活への拘りを前面に押し出したものとなるでしょう。「みんなが買うから」といった一辺倒の購入スタイルは影を潜め、デベロッパーが繰り出すポエムに惑わされる人も少なくなるはずです。

 

週刊誌などでは、毎年「値上がりするマンション、値下がりするマンション」といった特集が組まれます。私もよくコメントを求められるのですが、コメントをしながらいつも疑問に思うのが、はたして人は自分が住む家を「値上がりするから」買っているのかという根源的な疑問です。私自身は不動産投資のアドバイザーもやっていますので、多くの取引先に「値上がりしそう」な不動産についてコメントをしています。

 

しかし、不動産投資は現代においては金融マーケットとも密接につながり、国内外の投資マネーがマーケットを席巻する時代になっています。昭和後半から平成初期は都市部で勝手に成長する住宅やオフィスに対する需要で不動産は値上がりしていきましたが、今の時代ではそう簡単に儲けられるものでもありません。

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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不動産激変 コロナが変えた日本社会

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牧野 知弘

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