新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「野良リーマン」が溢れかえる時代が到来

しかし、この説はあくまでもこれまでのビジネスモデルを前提にした組織での議論です。これからのビジネス社会では、ダメ社員をはじめ淘汰される社員たちがこれまでちんたら行なっていた仕事のすべてを、ITやAIなどが代替してやっていくことになるのです。日本の労働法では米国などと違ってすぐにレイオフはできないので、ダメ社員でも雇用は確保されますが、どうでしょうか。

 

「君は今後、ずっとテレワークしていればよいから」

 

といって、毎日自宅のダイニングでパソコンを広げて待っていても、まともな仕事はほとんど来ない。仕方がないから電源入れっぱなしのパソコンを持って街中をうろつくような野良リーマンが溢れかえる時代になるかもしれません。この人たちはすでに会社に出社することすら叶わない社員になるのです。

 

さて、選別される6割の普通の社員の分岐点はどこでしょうか。やはり彼、彼女の仕事がどこまで会社に貢献しているかです。会社を経営していて、たまにイラっとするのが、人事の面談等の場で社員から、

 

「わたし、がんばってるじゃないですか」

 

と言われることです。このセリフに村社会にどっぷり浸かり、その村の中で甘えて暮らそうという魂胆が透けて見えるからです。がんばるだけなら誰でもできる。冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、がんばることに価値があるのではなく、肝心なのはどうがんばるか、何に対してがんばっていくかなのです。

 

もうお気づきだと思います。会社は現在の5割の人員でできるはずです。そうすれば労働生産性は飛躍的に向上します。OECDの順位も上位にランクインすることでしょう。日本企業はこのくらい、アナログ的組織の中に多くの無駄を抱えているのです。労働生産性が低いのは残業をだらだらやることだけではなかったのです。

 

このように考えてくると、これからのデジタル的組織とはどのような形態になっていくでしょうか。おそらく、既存の組織から中間管理職の多くが淘汰されていくと思われます。なぜなら1対1で社員と会社がつながる。社員は一つの会社に従属する社員としての関係から、複数の会社と業務委託契約を締結する個人事業主的な存在に変わってくれば、これらを取りまとめ、わかりやすく整理して会社の上層部に説明するような調整を主な仕事とする中間管理職的な役割というのはごく少数でかまわない、ということになるからです。

 

中間管理職がなくなり、社員のタスクが直接会社のヘッドクォーターに送られ処理されるようになれば、組織はおのずとピラミッド型から文鎮型に変わるはずです。部長や課長といった組織も必要なくなり、社員たちは誰のもとに仕えているとか、部長のゴルフのお相手をするから出世するなどといった村の論理は、いっさいまかり通らなくなることでしょう。

 

そしてこの変化は、やがて大企業を頂点にした日本の産業構造にも大きな変革をもたらしていくことになるのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

 

 

 

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