新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

テレワークは社員全員の能力を見える化する

社員たちに対して以前よりもかなり細かな内容のタスクを指示し、期限通りに提出された資料に目を通す。そしてこれらのピースをいかに組み立てて課全体の付加価値を上げていくかというのが、課長としての役目となります。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

もちろんテレワークをやったからといって、課長としての役割が変わるわけではありません。ただ、これまでは社員がひとところに集まってきてなんとなく一日が過ぎていったのが、社員一人一人と毎日タスクチェックで向かい合う、まるで毎日面接をしているような気分になってきたと、多くの課長が思ったはずです。

 

この変化には、これまでの「村」の中でのアナログ的な組織論理と、情報通信端末を通して社員と会社(あるいはここでは課長)、が1対1でつながるデジタル的な組織論理の違いがあるのです。

 

デジタル的組織においての課長の役割は、徹底して課全体の仕事のクオリティを向上させることにフォーカスされます。課の中で毎日繰り広げられるさまざまな雑事から解放されるかたわら、課長としての能力が、部長など自分以上の役職から丸わかりとなってしまうのです。

 

テレワークは社員個々の能力をかなり「見える化」すると言いましたが、それはいっぽうで、課長においてもまったく同じことを意味しているのです。

 

日本の会社組織ではよく「262の法則」があると言われます。つまり社員の約2割は会社のために本当に役に立ち、リードしていくことができる優秀な社員。また逆に約2割はいわゆる落ちこぼれ。会社にぶら下がるだけで何の生産性もない人たち。そして残りの約6割が普通の社員。素晴らしくできるわけでもないがまったく役に立たないわけでもない社員たちです。

 

こうした前提で会社は経営され、人事制度や報酬体系もおおむねこうした法則の中で、人より多少高かったり、低かったりの調整をしているのが実態です。

 

ところが、これからのデジタル的組織になるとこの法則は継続できるのでしょうか。実は一番クローズアップされるのが、この中間層、つまり組織全体の6割を占めている普通の社員たちです。なんとなく「ふつう」と思われていた社員たちの実力が、1対1のデジタル化された組織のもとでは実力差が露わになってしまうからです。

 

この組織の中では普通の社員たちの中で生き残ることができる社員と、ただ会社に寄生しているだけで、実はさほど能力もない社員とを選別していくことになります。テレワークで毎日出てくるアウトプットを正確に評価していけば、実力差はこれまでの組織の中では見抜けなかった部分においてもクリアになる。その結果この中間層の社員たちを分離、選別できるはずなのです。

 

つまり、「262の法則」は「230」になるということです。たとえば6割の普通の社員の中で半分に相当する3割部分だけが生き残る。この3割を徹底的に鍛え上げて底上げする。そして残りの3割はもともと仕方なく養っていた2割のダメ社員もろとも退場させられるのが、これからの会社組織です。よく「262の法則」は、リストラをして組織を縮めても結局、組織は262に戻り、均衡してしまうと言われます。

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