新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

テレワークの不安は「社員が野放しになる」

その当時の私から見れば、そういった会社はおそらくIT企業の中のさらにごく一部の特殊な会社にすぎないと思ういっぽうで、そんな会社が存在して売上を伸ばしているということに驚きを禁じえませんでした。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

それでも実感の湧かない私は、彼女にもう一つ昭和世代ならではの大事な質問をしてみました。

 

「でも、やっぱり困るよね。会社の飲み会、社員同士の飲み会ってできないじゃん。それってなんだか息が詰まらないかな」

 

私の質問をすでに見越していたかのように、彼女は苦笑いをしながらこう言いました。

 

「そうなんですよ。私もそれが一番気になったのですが、飲み会もオンラインなんですって!」

 

会社の飲み会は、社員がそれぞれ自宅で好きな飲み物、おつまみをスタンバイ。パソコン画面上でおしゃべりしながら飲み会をするのだと言います。画面上ではさぞかし盛り上がらないだろうと思いますが心配ご無用、けっこう盛り上がるんだそうな。そいつはとてもじゃないけどついていけないな、と言って笑い合ったものでした。

 

あれから4年がたった2020年4月。前年の11月に中国武漢市で発生した新型コロナウイルスの猛威は、ついに日本全土に緊急事態宣言を発する事態に発展しました。国は国民に対して不要不急の外出を控えるよう強く要請。事務系ワーカーの多くが会社に出社せず、自宅で仕事を行なうことを求められたのです。

 

いわばテレワークの全国お試しキャンペーンが、突如として国内ほとんどの企業を対象に一斉に開始されることになりました。

 

これまで、どの企業も当然のようにオフィスがありました。なるべく社員や取引先が集まりやすいように、オフィスは都心の交通の便の良いところを選んでいました。良い立地に素敵なオフィスを構えることは企業にとってステータスでもあり、学生のリクルート活動にも大いに効力を発揮してきたからです。

 

そのオフィスに通勤せず、自宅でいつもの仕事をやるように命じられたのです。できるわけがない、会議はどうするんだ、お客さんに会えない、社員同士の意思疎通ができない、社員が野放しになる――多くの企業で、不安視する声が聞かれました。

 

 

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不動産激変 コロナが変えた日本社会

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牧野 知弘

祥伝社新書

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