働き方改革とは、結局何だったのか
2018年6月29日、安倍首相の私的諮問機関である働き方改革実現会議が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、通称「働き方改革関連法案」が可決・成立し、2019年4月よりその一部が施行されました。
2012年12月に成立した安倍政権は、これまでとても覚えきれないほどたくさんの政策目標、スローガンを掲げてきました。このうち働き方改革というのは、2016年に打ち出された一億総活躍社会の実現をベースに、その実現に向けての法律という位置づけになっています。
働き方改革の目標としては主に3つが定められています。
1つ目の目標は長時間労働の是正です。日本は世界の中でも長時間労働が常態化している国と言われています。滅私奉公して会社のために長時間働き続けることを美徳とする国民性や、それにまつわる社会常識を変えていこうというものです。具体的には厳しい残業時間規制を設け、大企業については月50時間を超える残業に対しては、賃金割増率を50%にするなどの施策を盛り込みました。
2つ目の目標は、正規・非正規社員の不合理な処遇格差の是正です。日本ではバブル崩壊後長引くデフレ社会の到来で、多くの企業が正社員の採用を抑制し、非正規社員の雇用を増やしてきました。その結果同じ仕事を行なっているのに非正規社員の賃金が正社員の6割程度に抑えられ、福利厚生施設等の利用においても不当な格差が生じている、というものです。こうした格差をなくしていこうというのが目的です。
そして3つ目の目標が、多様な働き方の実現です。この目標の中で謳われているのは、勤務する場所と勤務時間が限定されている現代の働き方を変えていこうというものです。その理由として、世の中には労働意欲があっても労働に参加できない人が多く存在することを問題として掲げています。たとえば子育て中であるとか、親の介護で労働に多くの時間が割けないような境遇にある人たちに、積極的に労働に参加できる機会を創出していこうというものです。実は働き方改革の一連の施策の中でテレワークという働き方が推奨されるのは、多くがこの部分です。