web会議が突き付けた職場の不都合な真実
テレワークという働き方は、あくまで現在、種々の事情でオフィスに通勤して仕事を行なうことができない人向けに、企業と個別に契約して情報通信端末などを活用して働いてもらうことが趣旨であるように受け取れます。企業と労働者の労働環境を職場に固定させずに通信などでつなげることによって、新たな労働力を確保しようというのが目的だったのです。さらにこうしたテレワークの実施にあたっては労働者の時間管理の徹底が不可欠であること、労働者に過度な労働をさせないようにすることも付け加えられています。
この法律で登場するテレワークの意味合いとは異なり、今回のコロナ禍に伴って世の中の多くの企業が実施を余儀なくされたテレワークは、本来の働き方改革には位置付けることができない働き方であったといえそうです。
働き方改革法案の中身をあらためて見ると、個々の改革案がいかに現状の労働環境を前提に構築されているかがよくわかります。基本的に仕事というものはオフィスに労働者が通勤してきて一定時間、働く。だから長時間労働はやめよう。同じ仕事をしているはずの社員の間での格差をなくそう。働き手は多様であるはずのものだから、もっと柔軟な働き方も認めよう。ここにあるのは今までやってきた働き方を根本から改革するのではなく、考え方を「改定」した程度のものに見えます。
しかしどうやら今回、コロナ禍であわててテレワークをやってみた企業の多くでは、今までの働き方そのものに対する疑問が出てきたと言えそうです。それは労働生産性に対する意識改革につながるものです。
働き方改革でも指摘されているように日本における労働生産性の改善は急務です。日本は残念なことに労働生産性においてはOECD36カ国中21位。なんとアイルランドの半分。G7に至っては最下位です。
国はどうやら、この労働生産性の低さは、日本人が長時間働くからだという思い込みがあったようです。だから残業時間を抑制する、一定時間以上に残業したらペナルティを与えるという施策を生み出したのです。