新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

web会議が突き付けた職場の不都合な真実

テレワークという働き方は、あくまで現在、種々の事情でオフィスに通勤して仕事を行なうことができない人向けに、企業と個別に契約して情報通信端末などを活用して働いてもらうことが趣旨であるように受け取れます。企業と労働者の労働環境を職場に固定させずに通信などでつなげることによって、新たな労働力を確保しようというのが目的だったのです。さらにこうしたテレワークの実施にあたっては労働者の時間管理の徹底が不可欠であること、労働者に過度な労働をさせないようにすることも付け加えられています。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

この法律で登場するテレワークの意味合いとは異なり、今回のコロナ禍に伴って世の中の多くの企業が実施を余儀なくされたテレワークは、本来の働き方改革には位置付けることができない働き方であったといえそうです。

 

働き方改革法案の中身をあらためて見ると、個々の改革案がいかに現状の労働環境を前提に構築されているかがよくわかります。基本的に仕事というものはオフィスに労働者が通勤してきて一定時間、働く。だから長時間労働はやめよう。同じ仕事をしているはずの社員の間での格差をなくそう。働き手は多様であるはずのものだから、もっと柔軟な働き方も認めよう。ここにあるのは今までやってきた働き方を根本から改革するのではなく、考え方を「改定」した程度のものに見えます。

 

しかしどうやら今回、コロナ禍であわててテレワークをやってみた企業の多くでは、今までの働き方そのものに対する疑問が出てきたと言えそうです。それは労働生産性に対する意識改革につながるものです。

 

働き方改革でも指摘されているように日本における労働生産性の改善は急務です。日本は残念なことに労働生産性においてはOECD36カ国中21位。なんとアイルランドの半分。G7に至っては最下位です。

 

国はどうやら、この労働生産性の低さは、日本人が長時間働くからだという思い込みがあったようです。だから残業時間を抑制する、一定時間以上に残業したらペナルティを与えるという施策を生み出したのです。

 

 

次ページweb会議で時間短縮、会議数減の効率化
不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

不動産が高騰し続けている。 銀座の地価は1980年代のバブル期を上回り、三大都市圏と「札仙広福」(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇が著しい。国内外の投資マネーの流入、外国人富裕層の購入を背景に、超大型ビルや再開発の計画…

不動産激変 コロナが変えた日本社会

不動産激変 コロナが変えた日本社会

牧野 知弘

祥伝社新書

新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は大激変している。「不動産のプロ」であり、長く現場の動向を観察してきた著者は、そう断言する。いったい、何が変わるのか?たとえば、従来社員一人当たり三坪で計算されて…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録