新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

リアルな会議は出席者の無駄話が多い

また、各画面の背景がそれぞれの自宅ということになります。部長、書斎じゃなくてここダイニングじゃない? ジャージ姿でダイニングに座っている部長に対する社員の印象は、これまでのものとだいぶ変わってきます。もちろん、服装や場所なんてビジネスに対する判断力や指導力と何の関係もありません。的確な指示を出し、社員を導いてくれるのならば問題なし。ところが、これまでとかく座っているだけだった部長になると、社員から見てただ、ダイニングに座っているおっさんになってしまいます。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

大企業と言われているところほど、部長以上の役職者には会社の門をくぐれば仕事をしていることになる、会議の場に座って周囲を睥睨し咳払いでもしていればみんなが忖度するとしか思っていないのではと、疑りたくなる人が多いものです。こうした形だけの役職者をweb 会議は炙り出してしまうのです。

 

web会議の場では司会進行がとても大事になります。なにしろ全員が同じオフィスの会議室に居るわけではありません。各議題に則って、説明者を促し、質問する人を的確に指名していかなければなりません。

 

実はオフィスで行なわれるリアルな会議では、出席者の無駄話が多いのです。会議中であっても役職者などは、ちょっとした思いつきでテーマとはあまり関係のない話を始めたりします。それでも出席している社員たちは、部長のお話なので素直に聞く。顔を見られているので、部長がこちらに顔を向けると頷いて見せる。ときたま「そうですよね」などと相槌を打つ。すると満足そうな部長。よし、これでよい、などと余計なことばかりで時間が費やされていきます。

 

ところがweb会議になると、基本的には音声が主力になります。パソコン上の小さな画面が会議室になってしまうため、相手の顔や表情はあまり読み取ることができません。オフィスの会議室では、音声以上に視覚で会議の雰囲気を感じ取ることができるのですが、web 会議では誰が何を言うのかに出席者みんなが集中する傾向にあります。

 

その結果として無駄口がなくなります。集中して無駄口を聞くことほど骨が折れることはないからです。「昨日のゴルフでさあ」なんていう話題は集中して聞いている社員たちからは、「はいはい、それは後回し」になってしまうのです。司会者も次にどんどん進めなくてはならないので、淡々と会議を進めることになります。

次ページ会議だけでなく、オフィスも無駄口の巣窟か?
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