「マンションがスラム化」は絵空事ではない
さて、問題は後者です。中には不動産価格の急落に狼狽して売り浴びせる投資家も出てきそうです。
しかし最も心配なのが、売り時を失した結果、物件を放置することです。興味のなくなったおもちゃは誰もが部屋の片隅に追いやってしまうものです。たとえば、湾岸タワマンを所有はしているが、管理費や修繕維持積立金は支払わない。部屋を大勢の同胞人に使わせて他の住民とのトラブルを招くなど、厄介な出来事が発生する懸念もあります。
そうした環境の悪化は他の住民の退去につながり、結果としてマンションが「スラム化」するというシナリオも、あながち絵空事ではないかもしれません。
「帰る」ところがないのが日本人投資家です。彼らはどこへも逃げることができません。バブル崩壊で空港から去っていく外国人をただ茫然と眺めている日本人の姿が、再び見られるようになるかもしれません。
牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役